不動産取引現場での意外な誤解 売買編106 競売で執行官が瑕疵を見逃したらどうなるか
住宅新報 2017年12月12日 号 15面
Q 競売手続の中に、執行官による「現況調査」という業務がありますが、この現況調査の際に、「隠れた瑕疵」が発見された場合はどうなるのでしょうか。また逆に、見逃したときはどうなるのでしょうか。
A 「隠れた瑕疵」が発見された場合には、その「現況調査書」にその旨が記載され、「評価書」の中に一定の減額記載がなされます。逆に、見逃した場合には、何らの記載もなく、通常価額で手続が進められていくと思います。なぜならば、執行官には「隠れた瑕疵」についての調査義務がないからです(民法570条ただし書。判例)。
Q 以前に、競売物件の中に債務者の自殺死体があったという事件がありましたが、その際に、裁判所は執行官に過失はなく、国(裁判所)に責任はないという判断をいたしました。しかし、この場合の自殺死体は「隠れた」瑕疵ではないと思いますが、どうなのでしょうか。
A 裁判所の判断に問題はないと思います。なぜならば、その自殺死体の存在は、もともと競売対象になっている「不動産(土地・建物)」の中にあったものではなく、ガレージに駐車していた「自動車」の中にあったからなのです。つまり、「自動車」の中は執行官の調査の範囲外だというのです。
Q それにしても、その「自動車」の中をよく見れば分かったのではないでしょうか。
A それが、そのガレージの中が暗くてよく見えなかったというのが実態のようなのです。
Q 「動産類」が調査の対象外だということはわかりましたが、不動産の「付加一体物」についてはどのような扱いになっているのでしょうか。
A 一般に「付加一体物」とされている門扉や石垣などは一体で評価されますので、問題ないとしても、たとえば、当事者間で特別に除外されている庭石や灯籠、樹木などがある場合には、裁判所としてもそれを競売の申立て時に「申告」してもらわなければ判断できません。執行官にはそこまでの調査・立証義務がないからです(名古屋高決昭和58年11月4日)。その意味からも、執行官の「現況調査」の主たる目的は、その対象物件に対する占有者の特定や占有権原の有無等の「権利関係」にあるといえると思います(民事執行規則28条)。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























