短期の賃貸を隠して契約 不誠実は、客か業者か 紙上ブログ 不動産屋の独り言420 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉
住宅新報 2017年9月26日 号 7面
当社の入居者募集物件に申し込みが入った。今住んでいるアパートが老朽化して立ち退きになるという。審査もすんなり通っていたが、ある業者から電話があった。「今、そちらの物件で申し込みをしているSさんですが、実は当社で売買物件を探す依頼を受けています。おそらく賃貸での利用は短期になるかと思うのですが、客付け業者から伺っていますか」とのこと。それは初耳である。どうやら早ければ半年、長くても1年くらいで退去することになりそうだという。
手続きは速やか
売買の依頼を受けているのは立ち退くことになったアパートの管理会社で、客付け業者とは別の業者だ。当社とは親しくしているので「迷惑を掛けるといけないから」と親切で電話をしてきてくれたもので、話を壊そうというのではない。そういう連絡はとても有り難いものだ。
とはいえ、家主は長期で借りてくれる客を希望している。たまたま、1日遅れで別の業者から「長期で借りたいというお客さんがいるから、一番手の人がキャンセルしたらぜひ声を掛けてほしい」との連絡があった。となると、正直悩む。先の客付け業者はおそらく短期だと知っていて黙って申し込みをしてきたと思われる。「元付け業者に正直に短期の予定だと言ってしまうと審査が通らないから黙っていればいい」とお客さんには因果を含めていたに違いないから、はなはだ不誠実である。かといって、先に申し込みを入れてきた客を既に審査も通っているのに断ってしまうわけにもいかない。などと悩んでいたら、お客さんは契約金をすぐに振り込んできた。こちらの動きを察したものか。
長期利用を願う
仕方なく、短期のお客さんで契約することになった。家主には事の経緯を伝えるわけにはいかないから、契約の際にお客さんに説明して、「できるだけ長く入っていてくださいね」とお願いした。今、お客さんと意気投合して私の旅仲間と一緒に海外旅行に行く相談をしている。お客さんは年配の独身女性だが、性別など全く気にしないでいられる人である。ただし、そこまで親しくなっても、私はお客さんに売買の話はしない。当社にとってはあくまで賃貸のお客さんであって、売買では業者が先に付いているのだから。
(坂口有吉不動産・社長)























