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スタンダード会員限定違反業者、広告停止1カ月以上 「おとり広告」撲滅全国へ 近畿公取も8月から導入へ

住宅新報 2017年7月4日 号 1面

資格・実務
ポータルサイトのイメージ(実際の「おとり広告」とは無関係です)

ポータルサイトのイメージ(実際の「おとり広告」とは無関係です)

違反の大半がおとり

 取引する意思がない物件や契約済み物件、架空物件を掲載し、顧客を集める「おとり広告」。不当表示の中でも悪質とされ、不動産業界の自主規制団体である不動産公正取引協議会は重大な違反に対して厳重警告・違約金課徴(初回50万円、2回目以降500万円)の措置を講じてきた。16年11月には国土交通省から「おとり広告」禁止の注意喚起文書が業界団体に通知されるなど、不動産業界を挙げた対応が求められている。

 首都圏公取協が新築住宅や賃貸住宅などの広告表示を調べた16年度の調査対象物件(2312件)のうち、規約違反の疑いがある事案の処理件数は228件。中でも62件が重大な違反として厳重指導・課徴金措置となっており、インターネット広告が58件(93.5%)を占めた。その大半で「おとり広告」が行われており、特に賃貸物件の割合が高い。

 首都圏公取協は増加する「おとり広告」などに対応するため、12年3月に不動産情報サイトを運営する会員(賛助)が広告表示の適正化を推進する「ポータルサイト広告適正化部会」を設置した。現在のメンバーはアットホーム、CHINTAI、マイナビ、LIFULL、リクルート住まいカンパニーの5社。規約違反の物件情報を共有し、物件広告の削除や再発防止の策を講じており、16年度中に共有した物件数は2812件(首都圏エリアは1103件)に上る。

巧妙な手口増える

 同部会の立ち上げに尽力した首都圏公取協の佐藤友宏事務局次長は、「基本的に『おとり広告』の手法は架空物件を載せていた雑誌の時代と同じ。媒体がインターネットに変わっただけで、広告を掲載する側のモラルが重要」と話す。背景には店舗への集客を図りたい不動産業者の思惑がある。特に新規参入や事業規模が小さい業者にとって、賃料が高い1階に店舗を構えるのは難しい。ビルの上階への飛び込み客は少ないので、この空中店舗に集客するために「おとり広告」を利用するという訳だ。

 一方、13年頃から質的な変化があったと同氏は指摘する。周辺相場より2~3万円低いという安価物件の羅列から、5000円引きなど現実的な料金表示にシフト。最近では100の物件の中に2~3件の「おとり広告」を織り交ぜるなど巧妙な手口も増えた。「違反の発見はほとんどが同業者だが、その見分けは専門家でも難しい」(同氏)。周辺相場との乖離状況や料金の根拠、物件の状態、広告の反響数…。様々な状況を検証し、不動産業者の「取引する意思」の有無を見極めることが課題になってきたという。

 インターネットによる広告掲載の気軽さを利用し、ネットユーザーの閲覧率が高い夜間帯にのみ広告掲載する業者もいる。ポータルサイト側も反響が集まる広告に対し本当に成約しているかなど追跡作業を行うが、サイトの監視が続く平日を避け、休日のみを狙って掲載する業者も。証拠を残さないよう、来店のアポを取った後で広告を削除するケースもあるという。

 中には「賃料1万円、管理費7万円。仲介手数料1万円」で募集する事例も。そもそも「おとり物件」は買い付けできないため悪質業者は外部に情報を出さないが、「他社にも契約をオープンにしており、おとり広告の認定はできなかった。問い合わせに対する答え方など、業者と家主が口裏を合わせる例もある。ただ、大半の業者の違反は成約物件の削除忘れなどうっかりミスによるもので、悪質な業者はごく一部だ」(同氏)。

厳罰化にシフト

 こうした悪質業者に対し、首都圏公取協は厳罰化の動きを強めた。今年1月から適正化部会の5社が運営するポータルサイトに1カ月間以上広告掲載できない措置を開始。これは当該店舗のみでなく、法人が対象。都内で50店舗を運営する法人であれば、違反のあった店舗に限らず、ポータルサイトでの広告活動が50店舗で停止。企業名は原則伏せられているものの、ネット広告が主流の昨今、業者にとっては死活問題だ。

 同取り組みには4月以降、「ヤフー不動産」「いい部屋ネット」の各サイトも順次賛同。首都圏公取協は各地区の協議会へも同様の措置を呼び掛けており、取り締まり強化の包囲網を広げていく考えだ。8月から近畿地区不動産公正取引協議会でもポータルサイトの広告停止措置(5社)が始まる。また、首都圏公取協は4月からポータルサイトと連携し、賃貸業者に対して一斉調査も行っている。無作為に抽出した広告表示を調べる試みで、各不動産会社が規約違反にならないよう未然防止に努めている効果を実感しているという。

業者名公開も

 ただ、現行制度を隠れみのにする常習犯もいる。意図的に会社をたたみ、措置から逃れようとする悪質業者だ。「規約違反を犯し、聴聞会に呼ばれるまでの期間に会社を閉じる。規約違反であっても、宅建業法違反でないため、必要な書類がそろえば免許の取得が可能。悪質会社のメンバー構成・根幹は同じ。名簿に載るのも代表者・宅建士の名義のみなので、会社の再興が成立してしまう。物件名、号室が分かれば、近隣の不動産業者も取引状況がすぐに察知できる。だが、個人情報保護の観点から制約があり、おとり広告の判定ができない」(同氏)。現状は覆面措置のため、どの会社が広告停止中か分からないが、将来的には重大違反の業者は原則公開とする流れも見据えている。

消費者の心構え

 首都圏公取協では、神奈川県庁や宅建協会などと連携。消費者向けに、広告の見方を学ぶセミナーなどの啓蒙活動も行っている。

 一般消費者は「おとり広告」に騙されていることに気付いていない場合も多い。例えば、「おとり広告A」を見て来店した客が別の物件Bを案内されたとき。客が物件Bに満足し成約すれば、不動産業者に対しては感謝する形になり、「おとり広告A」そのものの存在がうやむやになってしまう。

 佐藤氏は巧妙化する「おとり広告」への対策として一例を紹介する。「賃貸物件ならインターネット広告は情報収集として使う。住みたい町があるなら、実際にその町の不動産会社に行き、家賃相場を確かめることが大事だ。あるいは週末、スマートフォンを持って、その不動産業者の最寄り駅から連絡してみるのもいい。これから来店する飛び込み客に『おとり物件』は案内できないから。タイムラグをなくせば、悪質な業者の見分けにつながる」と語った。なお、売買物件については、物件数が少ないこともあり、信頼できる営業担当者を選ぶことが大事。複数社に声を掛け、相性やサービス対応などを見極めるといいという。

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