不動産取引現場での意外な誤解 売買編(95) 危険負担条項の例示はなぜ「天災地変」なのか?
住宅新報 2017年1月31日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 「危険負担」に関する売買契約書の条項は、そのほとんどのものが「天災地変」を例示していますが、「天災地変」だけが対象なのでしょうか。
A そうではありません。確かに例示としては「天災地変」を挙げている契約書が多いようですが、外国人や外国商社との取引などにおいては、戦争とか暴動、内乱あるいは政変、為替リスクなども例示として入れることがあります。しかし、日本国内の取引においては日本に多い「天災地変」を例示することで十分だということで、そのようになっています。
Q 「天災地変」の場合には契約の不履行にはなるが、民法415条の「債務不履行」にはならない。なぜなら、債務者に「帰責事由」がないからだ、といえると思います。しかし、それが本当に債務者の不履行を「免責」にするだけの「不可抗力」によるものなのかという基準は、どの契約書にも定められていないと思うのですが。
A その通りです。ですから、それが本当に「不可抗力」なのかどうかを裁判で争うケースも相当あります。その一つの例として、阪神大震災のときの事案で、地震によって倒壊したホテルの下敷きになって死亡した宿泊者の遺族による損害賠償請求訴訟において、ホテル側の「不可抗力」の抗弁が認められなかったものがあります。繰り返し行われたホテルの増改築が建築上の「瑕疵」に当たるとされました(神戸地判平成10年6月16日)。裁判所の考え方としては、要は倒壊した建物と倒壊しなかった建物との比較において、倒壊した建物に「瑕疵」があったといえるかどうかの判断基準は、一つには「耐震基準」を満たしていたかどうか、建物の「老朽化対策」を怠っていなかったかどうか、あるいは特に工場などの危険物を取り扱う建物については、その事故防止のための「安全配慮義務」を欠いていなかったかどうかなどにあるようです。
Q 今言われた「安全配慮義務」というのは。
A 安全配慮義務というのは判例によれば、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方または双方が相手方に対して信義則上負う義務である」としています(最判昭和50年2月25日)。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























