マンション管理応援歌No.72 廣田信子の紙上ブログ 自分の感覚と違うものにも心を寄せて
住宅新報 2016年12月20日 号 6面
「総会で小学生の親から『知らない人にあいさつされたら逃げるように教えているので、マンション内ではあいさつをしないように決めてください。子供には誰がマンションの人か分からないので』という話があり、あいさつをしないようにという告知を出すことが決まったが、理解に苦しんでいる」という新聞投稿をきっかけに、マンション内の「あいさつ」論議がありました。
「あいさつ」は大事だと日頃言っている私にとっても悩ましい投稿でしたが、子供を持つお母さんに聞くと、このような教えは、今決して珍しくないといいます。異常者は、見た目で分かるわけではなく、優しそうに近づいてくるのですから。あいさつをしない失礼な子供と思われるリスクと、万が一でも子供が犯罪に巻き込まれるかもしれないリスクを天秤にかけて、子供を守るためには仕方がないと親は真剣です。
マンションの真ん前のバス停で、塾帰りの小学生をお母さんが待っています。タワーマンションで、女の子がエレベーターを降りて自宅までの間を一人で歩かないようエレベーター前まで迎えにいくという人もいます。
今の子供の安全の状況は、昔の感覚での想像を超えています。ネット上の異常な書き込みをしている人も市民生活を送っていると思うと、子供が遊ぶ様子をじっと見ている人がいるだけで緊張するといいます。で、子供も知ない人にあいさつされると緊張するので、できれば子供が一人のときは声をかけないでほしいと。
そういった状況を理解し、子供単独の場合には声を掛けるのを控えるのであれば、せめて大人同士はきちんとあいさつを交わし、子供にとっての「知らない人」を減らしていく努力も必要です。「あいさつ」は、おかしな人がマンション内に入り込まない防波堤にもなるのですから。「知らない人」が「知っている人」になったら子供の方からあいさつをする。それまで大人は待つという気持ちでいたいと思います。
自分も担い手の一人
時代も価値観も変化します。自分の感覚と違うものを「信じられない」と片づけないで、相手の心情に心を寄せつつ、一人ひとりが自分も安心できる住環境をつくる担い手の一人であることを忘れずにいたいと願う年の瀬です。どうぞよいお年を!
(マンション総合コンサルティング代表取締役)
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