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スタンダード会員限定仲介営業に問われる姿勢 依頼者の利益守る忠実性

住宅新報 2016年8月9日 号 19面

売買・賃貸仲介
住宅という社会資源の適正配分を実現するため、個人間の資産リレーをサポートする仲介業へ

住宅という社会資源の適正配分を実現するため、個人間の資産リレーをサポートする仲介業へ

資源を適正配分

 早稲田大学研究院客員教授の赤井厚雄氏は「不動産の資産価値を維持していくためには、その不動産を社会的に最も有効に活用できる買い手に渡していくことが求められる。つまり、仲介という仕事は資源の適正配分という重要な使命を担っている」と指摘する。

 売主は少しでも高く売りたい、買主はなるべく安く買いたいという従来型の市場では、両者の利害は対立し続けるため、住宅市場は活性化しない。買主にとって、「中古住宅は安いからこそ魅力がある」ということであれば、住宅は取引されるたびに価格を下げてゆくしかない。

 そうではなくて、買主も将来は売主になるという前提に立つべきであろう。アメリカの住宅流通市場が活性化しているのは、中古住宅でも価格が上昇しているからである。

 つまり、売主も買主も資産価値を維持させながら資産を承継することが両者にとっての利益であるし、マクロ経済学的にも重要になる。

 売主と買主は利益相反の関係ではなく、資産価値の維持向上という点で利害が一致する市場を目指さなければならない。

 個人間の資産リレーという考え方が成り立つもう一つの理由は、中古住宅の価格には売主の利益が乗っていないという点である。その分は企業の利益が乗っている新築住宅に比べて当然安いわけである。

個人間資産リレー

 品質が落ちているから安いという考え方を改めることが重要である。インスペクションや既存住宅瑕疵保険の整備によって品質の保証はできつつある。品質を保ちながら「個人間の資産リレー」をサポートすることこそ、仲介という仕事の今日的意義となる。

 住宅の品質を維持し、それを証明していくために欠かせないのが、インスペクション(建物診断)である。そのインスペクション制度が改正宅建業法上に明確に位置づけられ、その活用促進が仲介業者の業務の一つとなった。

 具体的には(1)媒介契約時に宅建業者がインスペクション業者をあっせんすることができるかどうかを示し、媒介依頼者が希望した場合にはあっせんする。(2)インスペクションを行った場合にはその結果内容を重要事項説明時に買主に対して説明することなどが決まった。

 インスペクションの結果内容を買主に「説明する」ということは、建物診断報告書をそのまま「提示」したり、棒読みすることとは違う。改正法の趣旨が「消費者利益の保護の一層の徹底」にあることからして、いわば〝身のある〟説明でなければならない。依頼者の利益を守る責務が宅地建物取引士に課されることになる。

 更に同改正業法は、第37条関係の改正で、売買契約時には「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者(売主・買主)の双方が確認した事項を記載した書面を当事者に交付しなければならない」ともしている。仲介業者にとって、建物知識が必須の素養となり始めたことになる。

 しかし、インスペクションや既存住宅瑕疵保険の整備は住宅市場活性化の必要条件であって十分条件とは言えない。十分条件となり得るのは、住み替え需要の増大である。その新たな住み替え需要の発掘も仲介という仕事の重要な使命となる。

 今後は、住まいを選択する動機が、これまでのように結婚や子供の成長といったことだけでなく、個人の人生観・仕事観、友人などパートナーとの同居、趣味など多様な要因によってもたらされる社会がくる。

暮らし方をサポート

 そのような新たな住み替え需要の発掘に向け、仲介業者は関連する情報の収集に努めなければ、的確なアドバイスをすることができない。

 例えば、住文化は日々の暮らしを楽しむところから生まれる。何を着るか、何を食べるかを楽しむように、〝どこに、どんなふうに暮らすか〟を楽しむこと、それを人生の節目ごとに捉え、それを実践するためのサポートが仲介の仕事になる。

 その具体的なツールの一つが〝リノベーション〟である。リノベーションは従来から使っていたリフォームという言葉とは概念を異にし、単なる〝復元〟ではなく、〝新たな価値創造〟を目的としたものだからである。

 耐用年数という従来型の発想とは逆に、むしろ古さや経年の魅力を引き出すために、建物の歴史やストーリーをコンセプトにして改修したり、引き算の発想で減築による味わいを演出したり、感性重視の限定的ライフスタイルを提案したりすることで、建物価値の大幅アップを狙うものである。建物の用途を変えてしまうコンバージョンも新たな価値創造の一手段と言えるだろう。

建物知識が必須に

 こうした建物重視のトレンドが仲介業務にも大きな影響をもたらすことになった。これまでは、仲介業者や営業マンに対し建物に関する専門知識を求める業界風土はなかった。流通市場にあって不動産の主役はあくまでも〝土地〟だったからである。しかし、バブル崩壊による〝失われた二十数年〟を経た今、人々はようやく不動産のもう一方の主役となるべき〝建物〟に関心を寄せ始めたのである。

 建物に新たな価値を創造するリノベーションやコンバージョンが注目されるようになれば、中古住宅を仲介する宅建業者がそれらに関する知識を持たなければならないのは当然だろう。

 仲介業は長い間、取引当事者を媒介するだけの立場に甘んじてきた。しかし、今後はそれに加え、依頼者の利益を守るという明確なスタンスが求められることとなった。まさに宅建士の名にふさわしい改革が始まったのである。

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