不動産取引現場での意外な誤解 賃貸借編(81) 借地人は他人の私道を通行する権利があるか?
住宅新報 2016年6月28日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 前回までの売買編では私道通行権の話が出ていました。土地の賃貸借の場合にも、前面道路が他人の私道であったら通行権の問題が生じるでしょうね。
A それは当然生じます。借地をした土地の所有者と前面道路の所有者が異なるのですから、当然通行権の問題は生じます。ただ、その賃貸借の対象になっている土地の所有者(賃貸人)が、その他人の私道に対し通行権を有していた場合には、話は別です。
Q それは、具体的にどういうことでしょうか。貸地の土地の所有者に通行権があれば、その土地を借りた借地人にも通行権が生じるということでしょうか。
A そうではありません。通行権が生じるというのではなく、既に生じている通行権によって通行することができるということです。例えば、土地の所有者(賃貸人)に通行地役権があれば、借地人がその通行地役権を土地の所有者に代って代位行使できるということです(判例)。
Q なるほど。新たに借地人に通行権が発生するのではなく、既存の通行権を借地人が代位行使するということですか。そうすると、借地人には通行地役権という権利を独自に取得することはできないということですね。
A そういうことです。この点については、学説には借地人に通行地役権の取得(発生)を認めるものが多いのですが、判例は否定的に解しています。
Q それでは、通行地役権のように、借地人が土地所有者(賃貸人)の権利を代位行使するというのではなく、借地人が直接権利取得ができるというような通行権はないのでしょうか。
A あります。それは民法210条の、昔の言い方でいえば囲繞地通行権です。ただ、この囲繞地通行権については、借地権が「地上権」であれば、民法267条の規定によって地上権にも囲繞地通行権の規定が準用されますので問題はないのですが、土地の「賃借権」の場合には、最高裁はあくまでも対抗力のある土地の賃借権についてのみ囲繞地通行権の取得を認めていますので(昭和36年判例)、借地人は土地の「賃借権」を登記するか(民法605条)、借地上の建物を登記して第三者対抗力を具備する必要があります(借地借家法10条)。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























