紙上ブログ 不動産屋の独り言 358 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 置かれている状況を理解していない客(下) 延々続けられるババ抜き
住宅新報 2016年6月28日 号 7面
何事もなかったかのように、あっけらかんとした顔でやって来た男は、「以前部屋探ししていて決めなかったM社の物件なんだけど、あの時の担当者から電話があって、『まだ探しているのか』と聞かれたので『今も探している』と言ったら、『こないだの物件がまだあるから』と言うので、申し込むから今月中に絶対に出るから」と上機嫌で言う。あり得ない話である。経過の報告などしてこないから月の半ばになって電話して「申し込んだのか」と聞いたら、「今、どの物件がいいか選んでるから」と言う…。それでは月末の退去などとても無理な話である。
思った通り
思った通り、であった。この男はただ時間稼ぎをしていただけで、出て行く気などサラサラないのである。だからこそ、深刻な顔でなく明るい表情でやって来たのだ。それで私に「今度こそ希望が持てるかも」と期待させようとしたに過ぎない。私が「今までの話は全部ウソで、会社に辞表を出した話もウソ。それでどうやってお前を信用しろと言うのか。どうせウソに決まってるだろうが。絶対に今月中に出て行くんだな。もしも出て行けなかったらどうする」と聞いても、笑って、「絶対に今月中に出ますから」と無責任に答える。
連帯保証人がしっかりしているので長引いても家賃の心配はしていないが、ハナから信じていないと言っても、この男のウソに振り回されるのはいいかげん辛いものがある。
勝手なこと
最後に当社に来た時に、頼んでもいないのに地方に住む姉の連絡先を置いて行って、しばらくして電話してきて「姉に電話したのか」と聞くので、「お姉さんは無関係だからしていない」と答えると、私に「連絡しろよ」と命令する。それで「誰に口をきいてんだよ!」と叱ると、「僕は縁を切っているから電話できないんで、そっちから掛けて請求すれば払ってくれるから」と勝手なことを言う。救いようがない。
この男、うちの管理物件を出たなら別の業者、別の家主の物件に入居することになるワケで、そうしたら「苦労する人間が入れ替わるだけ」のこと。たとえ首尾よく追い出しても、それでは延々ババ抜きをさせられるだけだ。業界にブラックリストは必要であろう。
(坂口有吉不動産・社長)
























