2016宅地建物取引士受験セミナー (22)
住宅新報 2016年4月12日 号 8面
【問題3-6】
占有に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
(1)善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得するが、本権の訴えにおいて敗訴したときは、占有開始時からの果実を返還しなければならない。
(2)占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができるが、悪意の占有者は償還請求できない。
(3)占有者が支出した有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、占有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。
(4)悪意の占有者は、その責めに帰すべき事由によって占有物を滅失させたときは、その損害の全部の賠償をする義務を負う。
【問題3-7】
留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
(1)自動車の修理を請け負ったAは、請負代金の弁済期が到来していなくても、自動車の返還を求める注文者に対して、当該自動車の留置権を主張できる。
(2)建物の賃借人Aは、賃貸借契約の満了時に、敷金返還請求権を被担保債権として、賃貸人に対して当該建物の留置を主張できる。
(3)借地権者のAは、借地契約の満了に伴い、借地権設定者に対して有する建物買取請求権を被担保債権として、建物と敷地の留置権を主張できる。
(4)建物の二重譲渡において、その引渡しを受けた第一の買主のAは、売主に対する履行不能を理由とする損害賠償請求権を被担保債権として、登記を経た第二の買主Bに対して、建物の留置権を主張できる。
【問題3-8】
AがBに対して有する債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
(1)この債権が、「Aの請求があれば、1週間以内に支払う」という内容である場合、この債権は、Aが支払い請求した日を起算点として消滅時効が進行する。
(2)Aが債権の存在を知らないときは、消滅時効は進行しない。
(3)不動産の売主Aが、約束の引渡日に当該物件を引き渡さなかったので、買主が同時履行の抗弁権を主張して代金の支払を拒んでいる場合、Aの代金債権につき消滅時効が進行することはない。
(4)1回でも支払を怠れば、債権者のAは残代金の支払を求めることができる旨の特約のある割賦販売契約の場合、買主が支払を怠っても、Aの支払い請求がなければ、消滅時効は進行しない。
【問題3-9】
Aを売主、Bを買主とする建物の売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
(1)他人物売買において、Bへの所有権移転がなされず契約が解除された場合、Bは、解除までの使用利益を売主に返還する必要はない。
(2)Bの代金未払いの場合に,Aが履行の催告をしたとき、その催告期間経過後であっても、Aの解除権行使前にBが代金等を支払えば、Aは,契約の解除ができない。
(3)Aは、自ら契約の履行に着手した場合でも、相手方のBが履行に着手していなければ、解約手付に基づく解除権を行使できる。
(4)契約締結時に当事者が予測しえなかった事情の変化があった場合は、当事者に帰責事由がなくても、解除が認められる場合がある。
【問題3-10】
相殺に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
(1)Aが建物をBに売却し、引渡しも完了している場合、Aは、売買代金債権を自働債権とし、弁済期の到来していないBのAに対する貸金債権を受働債権として相殺できる。
(2)自働債権に同時履行の抗弁権が付着していても相殺できるが、受働債権に抗弁権が付着していると相殺できない。(3)AがBに対して有する債権には相殺禁止の合意があった場合、それを知らずにCが債権譲渡を受けたとしても、Cは、当該債権を自働債権とし、BのCに対する債権を受働債権として相殺できない。
(4)不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とする相殺は、不法行為を誘発するおそれがあることから認められない。
【問題3-6】 正 解 (4)
(1)は誤り。
善意の占有者が本権の訴えに敗れたときは、訴えの提起時から悪意の占有者とみなされる(民法189条2項)ので、その時からの果実を返還すればよい(同法190条1項)。
(2)は誤り。
占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる(同法196条1項)。民法は、善意者だけに限定していない。
(3)は誤り。
有益費は、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる(同条2項)。
(4)は正しく、正解。
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負う(同法191条)。
【問題3-7】 正 解 (3)
(1)は誤り。
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置できる。ただし、その債権が弁済期にないときは、留置できない(民法295条1項)。
(2)は誤り。
賃借人の家屋明渡し債務と賃貸人の敷金返還請求権は対価的関係にないので、賃借人は、留置権の主張をできない(最判昭49.9.2)。
(3)は正しく、正解。
建物を留置できる反射的効果として、借地権者は、当然に敷地についても明渡しを拒否できる(大判昭18.2.18)。(4)は誤り。
Aに建物の留置を認めても、売主の損害賠償債務の履行を強制することにはならないので、留置権の主張はできない(最判昭43.11.21)。
【問題3-8】 正 解 (4)
(1)は誤り。
この債権は、請求後1週間を経過した時から消滅時効が進行する。仮にまた、Aが請求をしないで放置しても、契約成立後1週間を経過した時から消滅時効が進行する(民法166条1項、大判大3.3.12)。
(2)は誤り。
権利行使について法律上の障害がなくなった時から、消滅時効は進行する(民法166条1項)。債権者が権利があることを知らなかったという事実上の障害があっても、時効は進行する(大判昭12.9.17)。
(3)は誤り。
同時履行の抗弁権のような法律上の障害があっても、権利者が除去できるものである場合には、消滅時効は進行する。消滅時効は権利を行使し得る時より進行することは、肢(1)で述べた(同条)。
(4)は正しく、正解。
買主の不履行があっても、売主が請求して初めて全額について弁済期が到来する本肢の割賦販売契約では、債権者の全額支払いの請求がなければ、全額についての消滅時効は進行しない(最判昭42.6.23)。
【問題3-9】 正 解 (1)
(1)は誤りで、正解。
解除により売買契約は遡及的に消滅する(民法545条1項)。そして、当事者に契約に基づく給付がなかったと同一の財産状態を回復させるためには、買主に使用利益の返還をさせる必要がある(最判昭51.2.13)。
(2)は正しい。
いったん解除権が発生しても,解除される前に債務者の履行があれば履行遅滞という状況は解消されており、解除権の行使は認められない(同法541条)。
(3)は正しい。
解約手付に基づく解除権行使は、自ら履行に着手していても、相手方が履行に着手していないうちは解除できる(同法557条1項、最判昭40.11.24)。履行に着手した者の利益保護は図られるからである。
(4)は正しい。
事情変更の原則(同法1条2項)を理由に、判例は契約の解除を認める(最判昭29.2.12)。
【問題3-10】 正 解 (1)
(1)は正しく、正解。
自働債権については、弁済期の到来が必要であるが、受働債権については、相殺者は期限の利益を放棄できる(民法136条2項)ので、弁済期の到来は不要である(大判昭7.2.20)。なお、Aは引渡しを完了しており、Bは同時履行の抗弁権を有しない。
(2)は誤り。
逆である。自働債権に抗弁権が付着している場合に相殺を認めると、相手方の同時履行の抗弁権の主張の機会を一方的に奪うことになるので許されない(大判昭13.3.1)。
(3)は誤り。
相殺禁止の合意は、善意の第三者に対抗できない(同法505条2項ただし書)。したがって、Cは相殺できる。
(4)は誤り。
不法行為に基づく損害賠償債権を「受働債権」とする相殺は、不法行為を誘発するおそれがあることから認められない(同法509条)。当該債権を自働債権とする相殺は、そのおそれがないので認められる。
























