廣田信子の紙上ブログ マンション管理応援歌No.35 任せて絶対に安心な人などいない
住宅新報 2016年3月22日 号 6面
先月、ある大型リゾートマンションの元理事長が業務上横領容疑で逮捕されました。管理組合の資金を16年間で11億円着服したというのです。この元理事長は、なんと公認会計士、大手監査法人の代表社員だったというからびっくりです。専門家中の専門家だから安心…なんてことは幻想だと分かります。
ここは、もともとは管理会社が管理者で、その管理会社の不正をこの元理事長が監事として解明し、管理会社を首にして、自分が理事長(管理者)に就任したという経緯がありました。
理事長の横領でよく聞くのが、「管理組合のために一生懸命やってくれていたから、信頼して任せていたのに」という言葉です。でも、下心があるから、発覚を恐れるから一生懸命にするということもあるのです。理事長の横領ではほとんどお金が戻ってくることはなくダメージは甚大です。法律も管理会社には厳しくても理事長にはあまいのが現状です。
管理会社は何をやっていたの…と思ってしまいますが、「管理会社は信用できないからお金はさわらせない。自分が全部管理する」と理事長に言われれば、管理会社は何もできません。ましてや、この人は公認会計士であり、前管理会社の不正を暴いた正義の人として絶大な信頼を得ているのですから…。それで16年間、管理会社も、他の理事も、監事も、誰も通帳を見たことがなかったという、考えられないことが実際に起こったのです。
1人に権限が集中し、周りが信頼し過ぎると、こういうことが起こるのです。ましてやその人が信頼に結びつく専門家の肩書きを持っていて、管理組合のためによくやっているように見えたら、誰も疑いを持たない。もし、おかしいと思っても疑うようなことは言いにくい…というのが盲点です。しかも、専門家は偽装工作も巧妙なので発覚しにくいのです。
常に複数で関わる
常に複数の人が関わるシステムとして、管理組合は運営しなくてはだめだという教訓のような話です。誰か「安心して任せられる人に任せてしまいたい」なんて幻想は捨てることです。1人に権力が集中するより、複数の人間が関与し、外部の管理会社や専門家とも連携し、お互いをチェックし合うシステムが当たり前の文化になっていることに勝る安全はありません。
(マンション総合コンサルティング代表取締役)
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