不動産取引現場での意外な誤解 売買編(84) 改正民法に無過失責任の規定はあるか?
住宅新報 2016年3月15日 号 12面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 売主に対する損害賠償請求は、改正後は売主に「帰責事由」がある場合に限られるという記述が、以前のコーナーでありました。これは、現行法でいう売主に「過失責任」がある場合ということでしょうか。
A 売主の帰責事由は何も「過失」に限ったことではありませんが、簡単に言えばそういうことです。
Q それでは売主に「過失」がなかったら、どういうことになるのでしょうか。損害だけが発生して、売主に過失がなかった場合です。つまり、現行の瑕疵担保責任のような「無過失責任」に関する規定というものは、民法改正後においてはないのでしょうか。
A あります。それは、売買の目的物の種類・品質・数量に「契約不適合」があった場合に、買主が行うことのできる修補等の追完請求権や代金減額請求権に関する規定です。なぜならば、それらの権利の行使には売主の「過失」が要件になっていないからです(改正法562条、563条)。それらの権利は、売主の過失の有無に関係なく、引き渡された目的物が「契約の内容に適合」していなければ権利行使ができるという権利です。そして売主に「過失」があれば、更に売主に対して損害賠償請求ができるが(改正法415条1項ただし書き、564条)、代金の減額請求をした場合には損害賠償請求ができないことは、前々回に申し上げた通りです。その理由は、実質的に二重の賠償請求をしたことと同じことになるからです。
Q ということは、買主からの代金の減額請求は、売主の債務不履行による損害賠償義務について売主に免責事由(不可抗力など)がある場合(改正法415条1項ただし書の場合)にも行使できるということになるのでしょうか。
A 大変良い質問で、その通りです。売主が不可抗力によって債務の履行ができない場合にも、代金の減額請求はできます。この代金減額請求権は売買の目的物の種類・品質または数量が「契約不適合」の場合に、代金と目的物の価値との等価的均衡を維持するための権利として、契約の一部を解除して対価をそれに見合うものに減額させる権利であると考えることができるからです。買主の一方的な意思表示で減額の効果が生じる「形成権」とされているからです。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























