大型竣工でビル市況は オフィス供給、今後5年は大幅増 先行きに警戒感も
住宅新報 2016年3月1日 号 1面
今春以降、竣工・開業する大型ビルには、新宿駅南側の「JR新宿ミライナタワー」(32階建て、延べ床面積11.1万m2)、住友不動産が参画する六本木三丁目東地区再開発(40階建て、同19.9万m2)、西武プロパティーズのグランドプリンスホテル赤坂跡地開発の「東京ガーデンテラス紀尾井町」(36階建て、同22.7万m2)などがある。いずれも本格稼働は連休明け以降だが、商業、住宅、ホテルなどの複合機能を備えた、集客効果の大きいビルである。
また、秋以降、16年度中に竣工・開業するのは、日本土地建物などが参画する京橋二丁目西地区(京橋エドグラン、32階建て、同11.3万m2)、大手町では三菱地所の「大手町1-1計画B棟」(29階建て、同14.9万m2)、「大手町連鎖型都市再生プロジェクト第3次事業」(大手町1丁目、31階建て、同20.5万m2)がそれぞれ竣工する。
新ビルのテナントの成約状況や賃料水準などは明らかではないが、一部ビルでは建設当初から大口テナントが内定している事例も幾つかある。金融やIT系などの成長企業が分散していた事務所を大型ビルに集約入居するケース、近隣にある企業が大型移転してくるケース、更に各地の再開発計画進み、本社ビルや大型テナントビルの建て替えに伴い、一時的に移転する需要も含まれている。それが当面の供給過剰感を表面化させていないが、供給が増える18~19年には市況の軟調は避けられないという見方が多い。
賃料は「綱引き」状態
オフィス賃料水準は全体的に順調に回復してきた。東京都心部の大型ビルの場合、「空室率が数%程度とタイトなため賃料の増額改定が定着した。ただ、リーマンショック前の水準と比べると、その水準には戻っていない」(三菱地所)。年明けからの株価下落、円高、原油安など世界的な経済の減速傾向が微妙に大型ビルの賃料動向に影響を与えている。オフィス賃料の相場は、丸の内・大手町地区を頂点に形成されている。それを別格とすると、Aクラスビルの場合、月額坪当たり4万円台、3万円台、2万円台と幅広い。交通利便性、BCPなど設備内容などにもよるが、「駅近の新築大型ビルで4万円前後がアッパー」というのは市場関係者。テナントの賃料に対する見方も厳しく、「上げ渋っている」という指摘もある。当面、綱引き状態が続きそうだ。
空室率で気になる動き
緩やかながらも改善が続いているオフィスビル市況だが、今後の見通しにやや陰りが出てきた。
三幸エステートの調査(1月末時点)によると、東京都心の大規模ビルの平均空室率は2.74%で9カ月連続の低下となった。需給バランスの改善が続いている背景には、底堅い需要に加えて、過去2カ月新規供給が低水準にとどまっていることが挙げられる。ただ、築年数別に見ると、先行指標となる築浅ビル(築1~10年)の空室率が1.59%で前月比0.24ポイント上昇に転じている(グラフ参照)。築浅ビルは賃料水準が高めであるため、景気変動への感度が高いという。「前回のマーケットサイクルである07年のファンドバブル時も、築浅ビルの空室率がいち早く上昇に転じた。1回の上昇で局面の変化は断定できないが、今後に向けて気になる動きではある」(同社)と見る。
CBREによると、都内では16年から17年にかけて年平均約19万坪が新規供給される見込み。これは過去15年の平均と同水準だ。既存ビルでまとまった面積を確保しにくくなる中、グレードAビルについては、「今年上期に竣工する物件では、ほぼ満室のめどがついている状況」という。
サイクルがピークへ
同社では、今後も賃料上昇基調は続くが、市況サイクルのピークも近づくと見る。転換点と見ているのが18年だ。18年末頃をピークに緩やかな下落トレンドに向かうと予想する。その理由として、17年4月には消費税率の引き上げが予定されており、そして18年には金融政策を担う黒田日銀総裁の任期満了となるため、それらが企業収益にも影響する可能性があるからだ。更に、今年に入ってからの株価の乱高下など経済動向・予測を踏まえると、「想定している賃料ピーク時が、前倒しになる可能性もある」(同社)。
現時点では業容拡大のための増床や立地改善などの前向きな移転需要は相変わらず強く、入居内定のキャンセルや引き合い減などの現象は起きていないという。























