点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「私募ファンド」シリーズ(12) 構造変化に見出す価値の源泉 東京建物不動産投資顧問代表取締役社長若山伸六氏に聞く
住宅新報 2014年9月16日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

東京建物不動産投資顧問・若山伸六社長
――アセットマネジメント(AM)業界のグループ志向が強まっているようです。
若山氏 グループ経営によりアセットの付加価値を上げやすいという面も確かにあるが、一方で利益相反が生じる可能性にも十分配慮しなければならない。投資案件が枯渇し投資家の投資意欲が旺盛な状況では、競争力のある価格でなければグループ会社からも資産を取得することが難しくなっている。そういう点からも、アセットを、グループ内の最適な機能を提供する部門で保有あるいは管理し多様なソリューションにより付加価値を高め、商機を創出するというグループ戦略を、各社ともますます重視せざるをえないのではないだろうか。
――物件が買えない現在の不動産投資市場と、投資家スタンスをどう見ていますか。
若山氏 〝高値圏にある〟というのは共通の認識であろう。物件によってはリーマンショック前後当たりの水準にあるのではないか。ただし当時に比べてレバレッジを高くすることに一定の歯止めが利いている点は安心材料だ。
格別に優良な物件が適正価格でマーケットに次々と湧き出てくる状況ではなく、投資家の目線に見あう物件も限定的なのではないか。20年に東京五輪を控え、しばらく価格は上昇傾向で、利回りは当面低下していくだろう。そうした中で、今どこに投資をするのかは非常に悩ましい。
リーマンショック以降、オフィス賃料が相当落ち込んだが、本来はもっと高い水準にあって当然という見方もある。そこをどう見極めるかがポイントの一つだろう。逆にインカムの成長のポテンシャルに乏しい物件に投資した場合は、〝いつか来た道〟になることも覚悟しなければならない。プレーヤーによっては〝しばらく様子見〟との声も聞かれ、投資機会の慎重な検討が必要だ。
――売買市況が好転している割に、賃料反転が滞っているという見方があります。
若山氏 今回のアベノミクスでは、大胆な金融緩和が行われ潤沢なマネーと共にインフレ期待も加わり、不動産は当面値上がりするだろう。しかし、それが賃料上昇という形で跳ね返るかについては判断が分かれるところだ。そこはアベノミクスの3本目の矢によって、多少の地域差もあるだろうが都市経済がどれだけ潤うかによるところが大きいと見ている。
地方は流動性こそ低いものの、キャッシュフローは非常に安定している物件もある。その点では〝長期投資は地方〟という選択肢もあるはずだ。今後、人口減少で地方でも中心地に人が集中してくることが見込まれている。地方においては中心地の不動産の価値が更に安定感を増していくという見方もあり、私見ながら、地方というくくりだけでは判断を誤る可能性もある。
重要なことは、社会の構造変化をどうとらまえるかだ。例えば安倍政権の成長戦略がどの程度効果があるのか、どの分野にプラスに働くのか、特に高値相場では構造変化の影響をどう織り込んでエクイティのストーリーを描けるかにかかっているだろう。
――この10年でAM業界は大きく変化を遂げました。
若山氏 〝人が集まるところに不動産価値の源泉がある〟が鉄則だろう。AM会社としては、社会構造の変化の中でそのような〝場〟がどう変化していくかを見据えつつ、その特性を織り込みつつ投資商品として提供していくことが基本的なミッションだと認識している。従来の枠組みにこだわらない味付けも出てくることも期待できる。絶えず新しいアセットにチャレンジを続けることで、AM業界に求められる社会的、経済的な役割もますます大きなものになっていく。 (終わり)
わかやま・しんろく=13年東京建物入社。同社入社前はみずほ銀行に勤務、不動産ファイナンス業務に約15年間従事。在籍中、都市開発案件を中心に不動産ファイナンス案件を多数アレンジ。94年財務商品開発部調査役、00年不動産ファイナンス営業部参事役、10年同部部長。13年5月に東京建物に出向、その後同社に入社。同年12月から現職。昭和36年生まれ。





















