一棟リノベ最新動向 「防犯」「利便」向上が鍵 取得競争でエリア広域化
住宅新報 2014年6月24日 号 7面
共同住宅を一棟ごと取得し、共用部を含めて刷新・販売する一棟リノベーション事業。単に新しくするだけではなく、新築マンション並みの防犯性や利便性を確保するなど、リノベーションの〝一定水準〟が定まりつつあるようだ。一方で立地は、物件の取得競争が激しさを増す中で郊外にも広がっている。三社の最新情報を紹介する。
高円寺 スター・マイカ 機械駐解消、駐輪場を拡大
スター・マイカ(東京都港区)は6月中旬、一棟リノベ「ステラレジデンス高円寺」の販売を開始した。同社の主力は戸単位でのリノベーション再販だが、一棟リノベも8棟の供給実績がある。
今回の物件は、JR中央線・総武線・東京地下鉄東西線高円寺駅から徒歩7分、環状七号線沿いに立地。築19年で、元々は賃貸マンションだ。
共用部の工事は建装工業(東京都港区)が手掛け、大規模修繕とエントランスや外構の刷新を実施。ポイントは、「生活利便性」と「セキュリティ」だ。従前の駐車場は機械式で、利用が一世帯のみ。一方、通路部分などに自転車が多数放置されており、駐輪場不足が明らかだった。そこで機械式駐車場を平置きに変えて台数を減らし、駐輪場を増設。一世帯につき二台分を確保した。
専有部は、全25戸のうち空室だった3戸をリノベーションして販売。リビングの天井高が2.70メートルを超えるなど「基本スペックがよかった」(販売企画部の廣田大生主任)ため、間取りはそのまま生かした。設備や建具、壁クロス、床材はすべて交換している。専有面積は67.42~86.06m2、価格は4280万~4580万円。施工はサイキ(大阪府大阪市)が手掛けた。
このほか、首都圏で2物件を仕入れ済み。現在、大規模修繕を実施しており、年内をめどに販売する計画だ。
上野 東急リバブル 自動ドア、オートロック導入
エントランスに、鋭い工事音が響く。東急リバブルの「ルジェンテ・リベル上野稲荷町」。訪れた日は販売開始を間近に控え、最終工程が急ピッチで進められていた。
物件は89年に竣工したSRC造。元々は銭高組が施工した賃貸マンションで、同社の子会社であるリバブルアセットマネジメントが個人所有者から取得していた。JR各線が停車する上野駅から徒歩10分、東京地下鉄銀座線稲荷町から徒歩7分の場所に立地する。全46戸のうち空室は現在6戸。まず2戸をリノベーションし、このほど販売を開始した。
共用部の施工は東急ホームズが担当。冒頭の工事音の正体は、新たに取り付ける自動ドアだ。「新築マンションに必要な機能を付加する」(ルジェンテ事業統括部の井上貴雄係長)ため、オートロックや宅配ロッカーも新設した。
専有部の施工は大希企画が受け持つ。販売を始めた2戸の専有面積は37.94m2と44.96m2。いずれも2DKだった間取りを1LDKに変更し、前者は単身者、後者はDINKSをターゲット層に設定した。DINKSタイプは風呂の足し湯を自動で止める機能を付けたほか、カウンターキッチンを採用。また、2戸共にすべての設備と給排水管を交換した。価格は順に2580万円、2050万円。
上野稲荷町を含めて、同社はルジェンテ・リベルのブランドで計4棟の一棟リノベを供給。ただ、次の計画は未定だという。井上係長は「物件を仕入れたいが、競争が激しい」と明かす。営業センターを全国に構える強みがあるため「エリアにこだわりはない」(井上係長)といい、「築年数は25年前後が目安。手を加えれば、分譲マンションにつくり変えられる物件」(同係長)を求めているという。
柏 リビタ 新築減の郊外に照準
物件取得の難しさは、各社に共通する悩みだ。その中で30棟以上の供給実績をもつリビタ(東京都渋谷区)は、取得対象の物件属性に幅を持たせることで差別化に挑む。これまで主な仕入れ対象としてきた社宅が、企業側の資産整理が一巡し手に入りづらくなったことも、方針転換の背景にある。
具体的なターゲットは、まず都心の一等地に建つ高級賃貸。そしてもう一つが、首都圏の郊外エリアの物件だ。アクイジション部の中西祐部長は「郊外では新築マンションの供給が減り、価格が上昇している。割安なリノベ済みマンションのニーズは大きい」と話す。
直近では3月、千葉県柏市の賃貸マンションを取得した。JR常磐線柏駅から徒歩12分の立地。地上5階建ての全33戸で、築後26年が経つ。大規模修繕を行い、空室の13戸について順次リノベーションする予定。今夏にも販売を開始し、年度内の引き渡しを目指す。販売価格は3000万円台前半を予定している。
同社が13年度に取得した一棟リノベ用の物件は10棟(バルクでの取得を含む)。このうち郊外エリアに分類される物件は、柏のほかに神奈川県横浜市の藤が丘、東京都板橋区の常盤台などだ。中西部長は「機会があれば、2000万円前後の低価格帯も手掛けたい」と話し、需要の掘り起こしに意欲をみせる。
発展途上の一棟リノベ。そもそも取得対象となる一棟物件が少ないため、市場の急拡大は考えにくいが、だからこそ販売では〝希少性〟を打ち出せる。そのためには新築だけでなく、戸単位の中古リノベーションマンションとの違いを、消費者にどう伝えるかが重要。各社の試行錯誤が続きそうだ。


























