不動産取引現場での意外な誤解 売買編(63) 分譲物件の売買における「履行の着手」とはいつの時点か?
住宅新報 2014年2月11日 号 8面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主になる場合の売買契約においては、買主からの手付解除は売主(分譲業者)が履行に着手するまではできると定められています。ということは、売主が物件を引き渡す直前までは手付解除ができるということでしょうか。
A これは難しい問題ですが、一概にはそうとはいえません。この問題は「履行の着手」をどのように考えるかという問題ですから、ケースを分けて考えてみたいと思います。
まず、分譲物件の「完成売り」と「未完成売り」とに分けて、完成売りの場合にはその直近の引き渡し、すなわち残金決済の連絡があるまでは手付解除をなし得ると解釈できます。「未完成売り」の場合には、もし引き渡しの直前まで手付解除ができるとしたら、売主としては、青田で売った手前、一生懸命工事をして建物を完成させ、内覧会までやってキャンセルされたら、それは社会通念上通らない話だとは思いませんか。以上のことから、「未完成売り」の場合には、最大限内覧会の終了までは手付解除ができるとしても、内覧会が終了した後からの手付解除は、「履行の着手」がなされたあとの解除ということで認められないのではないでしょうか。
Q そうなると、完成物件や中古物件の売買の場合には、引き渡しの直前まで買主からの手付解除があり得るという理解をしておいた方がよいですね。
A そのように考えておいた方がよいと思います。もちろん、前回の質問のように、買主が売買代金を予定の支払期日までに支払わないというようなケースにおいては、売主(貴社)が買主に対し支払の催告をしている以上、引き渡しや所有権移転の登記等の手続もいつでもできるように準備をし、通知をしているでしょうから、売主側の「履行の着手」は既になされているということになり、その後買主がいくら手付解除をすると言ってきても、貴社はそれを無視し、契約解除をしないまま「違約金」だけの支払請求をすることも可能ということになるわけです。
Q 分譲物件のケースで、買主からの手付解除を防ぐ名案はないでしょうか。
A 難しいですが、そのためには手付の額をあまり少額にしないことです。そのくらいしかありません。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男
























