データで追うマンション建築費高騰 (上) 労務費、震災後5割増も
住宅新報 2014年2月4日 号 5面
連載: マンション建築費高騰を追う
「建築費が高騰している」。マンションディベロッパーに現在の事業環境を聞くと、必ず返ってくる言葉だ。用地取得競争の厳しさも重なり、戸建てや中古流通の強化など多角化を進める事業者も少なくない。マンション(RC造)建築費に何が起きているのか。(一財)建設物価調査会が毎月公表する、工事原価の変動を示す建築費指数(別掲下)などのデータを通じて、その姿を追った。
「建築費は東日本大震災以降、10%程度上がっている。主な要因は労務費」(三井住友建設)「鉄筋工など一部技能労働者の労務費は、リーマンショック後の最安値から倍になっている」(長谷工コーポレーション)
マンションを手掛けるゼネコンは、直近の建築費上昇が鉄筋工や型枠工といった技能労働者の不足に起因することを証言する。震災復興工事の本格化など、工事量増加に伴う人手不足だ。
建設物価調査会が公表するマンション(RC造)の建築費指数(05年平均が100)は、10年11月を底に上昇が続く。13年12月は、110.2だ。
指数をその構成要素である労務費を含めた「工事費」と「資材価格」に分けると、上昇の要因が、「工事費」の高騰に大きく影響を受けていることが見えてくる。
同調査会によると、鉄筋加工組立費は13年10月時点で、1トン当たり4万6000円。型枠工事は、1m2当たり4300円だ。いずれも、東日本大震災が発生した11年3月頃から上昇基調。震災直後と比較すると、5割増にも上る。
同調査会が発行する情報誌「建築コスト情報13年秋号」には、「鉄筋工不足が顕著となるなか、専門工事業者は値上げ要求を更に強めるものと予想される」や「型枠工事は、職人不足による労務需給ひっ迫の懸念が広まっている」といった指摘が並ぶ。
リーマンショック前 中国需要で鉄鋼急騰
「指数の直近のピークはリーマンショック前。現在はその水準に近づいている」
建設物価調査会総合研究所の吉田光正主任研究員は、そう話す。建築費指数はリーマンショック直前の08年8月に、110.7を記録した。直近を少し上回る水準だ。
ただ、その要因は現在と異なる。背景にあるのは資材価格の変動。特に鋼材(H形鋼や異形棒鋼)の急騰だった。
H形鋼は03年末まで、1トン当たり4万円台で推移していた。それが04年末には7.9万円。08年10月には最高で12万7000円まで上がった。03年末時点で3万円台だった異形棒鋼も、最大値は11万2000円(08年10月)だ。
鋼材の高騰は、外需の影響が大きい。中国をはじめとするアジアからの需要だ。
鋼材が急騰した04年を振り返った当時のレポート(建設物価04年12月号)では、「中国の旺盛な需要を背景に、原料である鉄くずなどが世界的に高騰している。このため、国内鋼材市況が年初から急騰して、過去に経験のない展開が続いている」と言及。以降、高水準が続く中での、各年末のレポート(建設物価12月号)ではその背景として、〝中国、東南アジアを中心にした鉄鋼需要〟が挙げられている。
一方で、当時の工事費は最大値を記録した08年7月で、鉄筋加工組立費が1トン当たり4万円、型枠は1m2当たり3550円だ。つまり現在の「工事費」は、建築費指数が今よりも高いリーマンショック直前を上回っている。
現在の工事費高騰を考えたとき、その背景には工事量の増加がある。ただ一方の建設業就業者自体の減少も見逃せない。国勢調査によると、建設投資の縮小に伴い95年以降、減少が続いている。リーマンショック後の急激な市場の落ち込みが更に、追い打ちをかけたとの指摘も聞かれる。 (葭本隆太)
◎建築費指数 建設物価調査会が調査、公表する労務費を含めた工事費や資材価格の細目などを用いて作成した、建築工事費に関する物価指数。毎月公表している。2005年平均を基準(=100)に価格の変動を示す。上記グラフは東京地区の工事原価指数。純工事費と現場経費で構成する。ゼネコンの利益は含まない。























