湾岸エリア 「中古流通市況、様変わり」 在庫枯渇で価格上昇
住宅新報 2014年1月7日 号 4面

グラフは東京カンテイ(東京都品川区)がまとめた、東京湾岸ゾーンの主要駅における中古マンションの売り希望坪単価推移だ。いずれのエリアも、直近にかけて単価が上昇傾向にあることが見て取れる。例えば、都営地下鉄大江戸線『勝どき』の13年1月の単価は239.6万円。4月以降は明確な上昇曲線を描き、五輪招致決定後の10月には260万円を超えた。その他のエリアも、概ね夏頃から上昇基調となっている。
価格と同様に着目すべき指標が、流通事例数だ。同社のデータを見ると、価格上昇への転換と時期を同じくして、事例数は減少に転じている。前出の勝どきの場合、13年4月に100件以上あった事例数が月を追うごとに減り、11月は66件。東京地下鉄有楽町線『月島』に至っては、4月の72件から11月は34件と半減している。同社市場調査部の井出武主任研究員は、「需要増に対して売り物件が少なく、それが価格上昇に拍車を掛けている」と指摘する。
東京23区における中古マンション価格は、12年下期に都心6区がいち早く底打ちした。この傾向が周辺エリアにも波及し、直近にかけて全域的に上昇基調にある。こうした中で13年9月、五輪招致が決定。中心部から周辺部に広がる、本来の価格復調の傾向とは異なる動きとして、開催予定地の湾岸ゾーンで局地的に価格が上昇しているのが実態だ。
「不人気住戸が売れる」
データ上の動きと、現地の不動産業者の見方は合致する。湾岸ゾーンに店舗を構える事業者を訪ねると、異口同音に「成約価格が上がっている」「とにかく在庫がない」といった声が聞かれた。各社の話を総合すると、湾岸ゾーンの中でも特に中央区に属する勝どきや月島、晴海エリアで、流通が活況を呈している模様だ。
ロイヤルハウジング販売(東京都新宿区)月島駅前店の関田信義課長代理は、「タワー物件を中心に相場が1割上昇している。上層階の相場は今、坪300万円近い。この2カ月で市況は様変わりした」と話す。買い手は実需層が中心で、5000万円前後のファミリー物件が売れ筋。一方、売主側は更なる値上がりを期待して売り控える傾向にあり、「在庫が従来の2分の1に減った」(関田氏)。そして売り物件が枯渇状態にある中、これまで買い手の付きにくかった住戸がさばける状況も生まれている。タワーの低層階や、管理費が割高で敬遠されていた物件の住戸などだ。「一時は坪230万~240万円程度が相場だったタワーの低層階住戸が、同250万円程度で成約した」(同)という。
このほか、複数の事業者から「値ごろ感のある、築20年以内の中古マンションの動きがいい」という声も上がった。相場は4000万円前後だという。また、投資目的によるコンパクト物件の需要増を指摘する事業者もいた。
相場以外の観点で、変化を実感する声もある。湾岸ゾーンで店舗展開するスタートライン(東京都中央区)の石川修平営業部部長は、勝どき・月島付近に関して「地元外からの注目度が高まった」と歓迎。「オフィス街が中心の中央区内で、居住人口の多くがこのエリアに集中している。商業施設が充実していて生活しやすく、実際に賃貸でもこの地域内で引っ越すケースが多い」(石川氏)と街の魅力を語る。
浮き〝沈み〟のタイミングは
一方でこうした活況が、五輪開催の20年まで続くとの見立ては現実的でない。
ある地場業者は「確かに在庫は少ないが、成約までのスピードが早いのは、我々業者から見て『適正価格』と思える物件のみ」と話す。湾岸ゾーンの新築マンションの販売は現在、総じて好調だが、「この状況がいつまで続くか」と懐疑的。そのうえで、新築の売れ行きが鈍った際の、中古流通市場への影響を懸念する。また、「市場価格をけん引するのは都心の一等地。そうしたエリアの価格とのバランスが取れていなければ、いずれ湾岸ゾーンでの高騰にはブレーキが掛かるはず」と冷静だ。
東京カンテイの井出主任研究員も、「今の相場で『買える』層の購買行動が一巡すれば、価格上昇は落ち着く」とみる。具体的には14年4月の消費税8%、更にその先の10%への引き上げ後に景況が落ち込むタイミングと重なる、と予想。「16年のリオデジャネイロ五輪が終わり、いよいよ東京開催へのカウントダウンが始まる頃、市場が再び盛り上がるのではないか」(井出研究員)
五輪開催まであと6年。インフラ整備や新築の供給動向をにらみつつ、中古流通マーケットを注視していく必要がありそうだ。























