点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 「環境と不動産」シリーズ(14) 社会的意義の高い環境対応 新日鉄興和不動産ビル事業本部技術都市開発ユニット技術管理部長 落合洋平氏に聞く
住宅新報 2013年12月17日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

新日鉄興和不動産落合氏
「環境と不動産」シリーズ14回目は、新日鉄興和不動産のオフィスビル事業における環境の取り組みについて話を聞いた。「法令に対応しつつ消費エネルギー削減を入居テナントに促す」対応に取り組むビル事業本部技術都市開発ユニット技術管理部長・落合洋平氏へのインタビュー前半。
――賃貸オフィスビルの環境対応についてお聞かせください。
落合氏 当社では、東京都による環境確保条例施行と省エネルギー法改正によりCO2排出規制が強化された10年から賃貸オフィスビル事業の環境対応に本格的に取り組み始めた。毎年、CO2を8%削減する総量規制がかけられた都条例に対しては、当社の基幹ビルである品川インターシティ、赤坂インターシティに興和住生築地ビルを加えた3物件について対応することを決め、初年度に「品川」が優良特定地球温暖化対策事業所の準トップレベル事業所認定、次年度に「赤坂」が同トップレベル事業所認定をそれぞれ取得した。
これらの認定取得は、CO2の削減義務が低減できるメリットに加えて、公にも優れた環境性能を有するビルとして認められたことを意味する。また興和住生築地ビルは、設備等ハード面の省エネ対策と入居テナントの省エネ努力もあり、3年連続でエネルギー使用量が原油換算1500キロリットルを下廻ったため、特定地球温暖化対策事業所指定の解除を申請する予定だ。
――環境対応に対するテナントの反応はいかがですか。
落合氏 省エネ法改正により、事業者単位の規制体系が導入されることとなり、企業単位でのエネルギー使用量の把握が必要とされ、入居テナントにも広くCO2削減義務が課されることになった。改正では、1年間に事業者単位(企業単位)の全国合算で原油に換算して1500キロリットルを超えてエネルギーを使用する事業者は特定事業者となり、中長期的に年平均1%以上のエネルギー消費原単位低減が目標として課された。
特に省エネ法改正の対象は、多くが大手企業という位置付けとなる。延べ床3万m2以上、1フロアの貸床面積が300坪以上というスペックの大規模ビルである「インターシティ」シリーズは、アンカーテナントとして大手企業をターゲットとしていることに加え、今後、ビルの環境性能の高さを入居テナントに積極的にアピールしていくという方針に基づいて、環境法令に積極的に対応した。
大手企業はCSRの観点から環境対応を重視する企業がほとんどであり、「品川」と「赤坂」の2つのインターシティの東京都認定取得は入居テナントから高い評価を得ることにつながった。
――環境対応の効果をどのように捉えていますか。
落合氏 省エネ法改正では対象となる法人が毎年、経済産業省及び管轄官庁にエネルギー使用状況の報告書提出を義務付けられた。更に東日本大震災以降、節電意識の高まりと共に、入居テナントからエネルギーの「見える化」に対する要望が増え、当社も環境インフラの整備に一層注力していくことにした。まずは、所有・運営している約50棟のオフィスビルの400以上のテナントに対して、ウェブにより月次ベースでエネルギー使用量とCO2排出量を一元管理できる、いわゆるエネルギーを「見える化」する環境システムを導入した。更にインターシティシリーズでは、環境性能に優れたオフィスビルという「ブランド」確立も視野に、リアルタイムによる高次のエネルギー監視システムを順次導入した。これは例えば、真夏のピークカットなどに柔軟な対応を促すシステムとして、テナントの節電対策向上につながっている。
また既存ビルを対象にしたCASBEE不動産マーケット普及版についても、「品川インターシティ」「名古屋インターシティ」で、最高等級Sクラスの認証を取得した。いずれも厳しいリーシング環境を意識した、テナントオフィスビルの競争力アップが目的。同時に、環境負荷低減を図る法令に対応しつつ消費エネルギー削減を入居テナントに促すという、社会的にも意義の高い取り組みとしてとらえている。 (続く)
おちあい・ようへい=01年興和不動産入社。ビル事業本部プロパティマネジメント部に配属。05年同本部営業統括部副参事。06年同本部設計施工部次長兼営業統括部。09年同本部技術・都市開発グループ技術管理部副部長。10年同本部技術・都市開発グループ技術管理部長。12年から現職。





















