スマートマンションの効果Ⅱ ~価値を追う~(上) 電力情報活用で生活利便向上
住宅新報 2013年12月17日 号 5面
連載: スマートマンションの効果

「パークタワー西新宿エムズポート」で採用する優待サービスは、タブレット端末などでアクセスできるHEMS画面に表示される
スマートマンションの価値向上に向けて、事業者や行政の動きが加速している。HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)が把握する各家庭の使用エネルギー情報を基にしたサービスの構築のほか、割安な電気代が受けられる高圧一括受電と付加設備を連携させることで、新たなメリットを生もうとする取り組みが見られる。最新のスマートマンション事情を追った。
〝HEMSが把握する電力使用状況を分析して、居住者のライフスタイルに合った優待サービスを提供します〟
12月11日、東京都新宿区西新宿で報道陣向けにデモンストレーションが行われていた。三井不動産レジデンシャルが供給したタワーマンション「パークタワー西新宿エムズポート」の竣工見学会だ。
ライフスタイルを分析
同マンションでは全住戸に設置された東芝製HEMS「FEMINITY(フェミニティ)」と、三井不動産グループが供給する住宅居住者向けのサービス(三井のすまいLOOP)を連携させた居住満足度向上サービスを初導入する。HEMSが把握する使用電力情報について、数週間から1カ月程度分のデータを基に各家庭のライフスタイルを分析。すまいLOOPが持つ、三井不動産グループの関連施設のほか、レストランや家電量販店などパートナー企業のものを含めた400種類以上のサービスの中から、そのライフスタイルに合ったサービスを提供する。
例えば、キッチンの電力使用量が少ない家庭の場合。外食が多いライフスタイルと分析したうえで、マンション周辺のレストランの優待を発行するといったイメージだ。
データ分析は常に行っており、電気の使い方が変われば、提供するサービスは変わる。また、季節などにも応じて変化していくという。
三井不動産レジデンシャルは、「使用電力情報を活用した新たなマーケティング手法。居住者の潜在需要などにアプローチできるのではないか」と話す。サービスは、入居が始まる年内から開始される。
使用エネルギー情報を利用したサービスは他にも見られる。代表的なものが見守りだ。HEMS機器「me-eco(ミエコ)」について、約1万6000戸(12月9日現在・採用決定済み)の導入実績があるファミリーネット・ジャパン(FNJ)は、14年4月から、ミエコを通じた無償の見守りサービスを始める。
エネルギー利用が発生したタイミングや一定時間利用がないときに、外部に通知するものだ。例えば、高齢者1人世帯で12時間以上トイレ利用がない場合、外部の家族などに伝えるといった使い方が想定される。
FNJは、「倒れたらすぐにといったリアルタイムに対応するものではないので完璧な見守りとは言えないが、心の安心材料になれば」と話す。
創出へ後押し
「住宅の〝スマート化〟は、節電につながるエネルギーマネジメントだけが目的ではない。HEMSなどが把握するエネルギー使用情報の利活用などを通じて、居住者の生活利便を向上させられるようなものを目指している」(経済産業省情報経済課)
HEMSが把握する情報の利活用による新たなサービス創出は、経産省も重要視する。同省では13年度、マンションのスマート化を後押しする補助制度(スマートマンション導入加速化推進事業・別掲)を始めた。スマートマンションの核で、マンション全体のエネルギーを管理するシステム、MEMS(マンションエネルギーマネジメントシステム)の導入費用などを助成するものだ。MEMSを導入して見える化などの省エネ支援サービスを行う事業者(MEMSアグリゲータ)を通じて行っている。
この背景には、東日本大震災後のエネルギー需給のひっ迫がある。エネルギーの見える化や制御ができるMEMSやHEMSなどの機器を普及させて、節電を促す狙いだ。
ただ、それとは別の期待もある。MEMSアグリゲータによる新サービスの創出だ。MEMSなどのエネルギーマネジメントシステムを普及拡大させていくためにも、それを活用した新たな付加価値が必要と考えている。
14年度は後者の目的達成に向けた施策を強化する。14年度予算要求に、「新しいエネルギーマネジメントビジネスの確立」として329億円を計上した。今年度同様にマンションのスマート化を補助するほか、実証実験を行う方針だ。
実証実験は、企業などと連携して行う。HEMSを数万世帯に導入して収集したデータを活用してサービスを展開するイメージだ。
経産省情報経済課は、「どういったサービスに需要が集まるか、何かトラブルは起きないか。成功体験などを蓄積したい」と話す。
プライバシーの問題
一方、使用電力情報の利活用に向けては、基盤の構築も重要視されている。特に、第三者のサービス事業者が各家庭の使用電力情報を利用する場合の、プライバシーの問題が指摘されている。
経産省が事務局を務めて、HEMSの導入加速に向けた課題を議論している有識者会議「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」は今年5月の会合で、その具体策を検討することを決めた。9月には専門に検討するワーキンググループを設置。現在、収集したデータを誰がどのように使うことが想定されるか、ユースケースを整理しているところだ。年明けから具体策の議論を本格化させるという。 (葭本隆太)
補助事業、95棟に交付決定 過半が既存物件
経済産業省によると、スマートマンション導入加速化推進事業では12月2日までに、95棟が交付決定された。このうち、過半の51棟が既存だ。
既存物件は導入の難しさが指摘されていた。管理組合の合意形成が必要になるためだ。実際、経産省は既存物件からも一定の申請件数が出ている現状に、驚きを隠さない。「補助事業開始当初は、ほとんどが新築だろうと予想していた。経産省としては、同様の補助事業を3年間続けたい意向を持っており、既存物件はスマート化された新築の効果が一定程度浸透してきたところで、後追い的に普及させていくものと想定していた」(情報経済課)と話す。
そのうえで、既存物件の申請が出てきている背景について、「管理組合向けに懸命に取り組んでいるMEMSアグリゲータが出てきている」(同)と指摘。具体的な交付決定事例は、割安な電気代が提供される高圧一括受電と組み合わせた導入費用ゼロという、組合の負担をなくしたサービスが主流になっているという。





















