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プレミアム会員限定-戦略-1棟リノベ③ 進む市場整備と変わる需要

住宅新報 2013年9月24日 号 5面

連載: -戦略- 1棟リノベ

マンション・開発・経営
リノベ協議会基準

リノベ協議会基準

 「R3住宅への適合に取り組む事業者は増えている」

 リノベーション住宅推進協議会(協議会)の三浦隆博事務局長はそう話す。R3住宅は協議会が安心などの観点から定めた基準(右表)を満たす優良な1棟リノベーション住宅だ。事業者の自主検査に基づき基準を満たす場合は、適合状況報告書が発行される。11年4月に運用が開始され、13年8月現在、12棟297戸が適合物件として登録されている。事業者ベースでは8社だ。

混沌市場にルール

 〝リノベーションによる既存ストックの性能や価値の再生・向上によって、住宅を求める生活者が、自分の価値観に合わせて無理なく自由な住まい選びができる市場をつくる〟

 協議会は09年7月、こうしたビジョンを掲げて設立された。これはリノベーション市場の整備という面で大きなポイントだろう。

 「『リノベーション』という言葉に定義がなく、中古住宅の販売活動などで乱用されていた。何がリフォームで何がリノベーションなのか分からない状態だった。消費者が安心して選択できるような規則を作って、流通を活性化させていくのが狙い」

 三浦事務局長は設立の背景をそう説明する。そして協議会が策定したのが、前出のR3住宅やマンション戸単位を対象にしたR1住宅などだ。R3住宅に先行して09年9月に開始したR1住宅は、13年8月までに適合物件が約1万2000件に上った。これは協議会が策定した基準が、市場のルールとして一定程度定着している証と言える。

00年代後半の普及

 『リノベーション』は00年代後半に急速に普及したと見られる。協議会の設立から更に過去を遡(さかのぼ)ると、そのことが伺える。

 05年8月、東京都三鷹市で1986年築の社宅を活用した1棟リノベ物件「桜アパートメント」が生まれた。これまでに30棟950戸(13年8月現在・コンサル含む)の1棟リノベ企画実績があるリビタの初物件だ。

 「当時は独身寮の資産リストラ案件などが多かった。新築を検討していた土地に立派な社宅がある情報などが舞い込んでいた。これを活用して、リーズナブルで優良な住宅が提供できるのではと考えた」

 前出の協議会事務局長でもあるリビタプロジェクトマネジメント部の三浦隆博部長は、事業開始の背景をこう説明する。そして、当時の状況を証言する。

 「『リノベーション』は一部のクリエイターや設計事務所で使われていた言葉。一般には広がっていなかった」

 この時から4年、協議会の設立時加盟社(賛助会員含む)は、約100社に上った。更に4年が経過した13年8月現在の加盟社(同)は約390社。現在も賛助会員を含めると、月10社弱程度のペースで増加を続けているという。

生活の質を考える

 新築の方が気持ちがいいから(73.2%)――。国土交通省が11年度の新築分譲住宅購入者を対象に「なぜ中古住宅を選ばなかったのか」と聞いたところ最も多かった回答だ(12年度住宅市場動向調査より)。中古住宅は中古であること自体に消費者が抵抗を示すと言われる。1棟リノベーション物件も元々は中古だ。消費者サイドにはどうとらえられているのだろうか。

 「抵抗感は薄くなっている」

 1棟リノベを展開する事業者たちは一様に答える。そしてその背景として、事業者たちは様々な要因を指摘する。

 コスモスイニシアは、リノベーションの〝刷新力〟を大きな力に挙げる。同社は1棟リノベ事業を本格化させる直前の11年頃、消費者の住宅需要に関する研究を進めていた。そこで、中古への抵抗感の根拠に見たのが、〝人が使った後のにおいが嫌〟という声だ。

 「リノベーションは従前住んでいた人の空気を和らげることができる。投資の仕方にもよるが、1棟リノベであればエントランスなどを含めて変えられる。結果、価格メリットを考えると新築検討者にとっても魅力ある商品になる」

 同社マンション事業部販売一部の辻川悟部長はこう話す。実際、同社が供給したリノマークス津田沼やリノマークス横浜仲町台は、新築を含めて検討したうえで決定した人が多かったという。

 05年から1棟リノベ事業を行うリビタの三浦部長は、消費者需要の変化を指摘する。

 「リノベ物件への需要はここ数年、2つの層が増えているように感じる。1つは住空間へのこだわりが強く専有部の自由設計ができる住宅が欲しくて選ぶ層。もう1つは、元々新築か中古かということにこだわりがなく、先に住みたい場所があって選ぶ層だ」

 立地優先で選ぶ購入者の増加は、別の観点で指摘する声もある。グローバルベイスの野田清隆常務取締役が言う。

 「人口減少などを背景に、街がコンパクトになってきている。郊外では地元ならではのお店などが減り、どの駅に降りても同じチェーンの店ばかり。そこに住む楽しさがなくなってきている。所得などの関係上、住宅に対する支払い能力には限りがある中で、例えば郊外で新築を買うのと都内で中古を買うのとどちらが質の良い生活ができるのか。そう考えて後者を選ぶ層が増えているのではないか」

 こうした声に併せて、消費者需要の根底には、協議会が策定したルールや国土交通省が進める中古住宅用の瑕疵(かし)保険といった安心・安全を促すための市場整備が進んでいることも、一定の効果を発揮しているという意見が聞かれる。 (葭本 隆太)

 

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