紙上ブログ 不動産屋の独り言216 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 「〝ゼロゼロ物件〟果たしてよいのか」 敷金は預かるのが親切
住宅新報 2013年9月3日 号 6面
賃貸市場は今「ゼロゼロ物件花盛り」の感がある。初期費用が抑えられることと、需要と供給の関係から意義が希薄になった礼金が消えることはいいことだと思うのだが、果たして敷金までゼロにしてしまうことが消費者の利益に繋がるものか、甚だ疑わしい。
不況の影響
最近は不況の影響で契約時の初期費用を抑えたい、という消費者の希望が強くなり、空室過多という実情と相まって礼金のみならず敷金までゼロになっていて当たり前で、住宅問題の専門家までがそれを「いいこと」だと歓迎しているが、私からすれば、馬鹿も休み休み言え、である。
敷金をゼロにして預からない、ということは退去時にクリーニング代を請求される、ということである。それだけなら先に預けておくか後で負担するかの違いで大差ないこと。だが、事はそんな単純なものではない。東京都の紛争防止条例によれば、退去時の原状回復費用は原則クリーニング代のみを請求して残金は返却する、となっているのだが、それには但書きが付いている。貸主と借主が予め合意をしたならその約定に従ってもよい、というもので、一部の悪質な業者がその但書きを悪用していると聞く。
悪質な業者も
広告はゼロゼロで募集して初期費用を安くして、喜んで申し込みをしてきた客が契約に行くと、一通り契約内容を説明した最後のほうで退去時のリフォーム代金分担一覧表を出して説明する。その段階では断れなくなっている客に同意した証として押印させ、約定通り、退去時に多額の原状回復費を請求するといった手口も考えられる。現実には無理であっても、断ろうと思えば断れたのだから合意が成立していた、と言われれば裁判でも借主側に勝ち目はない。
だいたいが、人様の不動産という高額な資産を借り受けるのに、いくら借手市場とはいえ保証金(敷金)を一切預けずに借りられて当然、などと考えるのが間違いで、本来は預けるべきものをケチるから後悔することになる。これは客も悪い。ではあるのだが、そういう素人を正しく導くのも我々プロの仕事。敷金は預かるのが公正で親切であろう。
(坂口有吉不動産・社長)























