点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 第58回 シリーズ「Jリート市場」 NISAが個人投資を促進 東京リアルティ・インベストメント・マネジメント代表取締役社長 大久保聡氏に聞く
住宅新報 2013年7月9日 号 5面
連載: 点検 不動産投資
点検不動産投資「Jリート市場」シリーズの今号は、東京リアルティ・インベストメント・マネジメントの大久保聡代表取締役社長のインタビュー後半の模様を掲載する。
――このところ活発な公募増資に対して、投資家の前向きな姿勢が見られます。
大久保氏 様々なPOがある中で、アクリーティブな公募増資には多くの投資家が積極的に参加してくるだろう。そうした期待を常に念頭に置きつつ、我々は安定路線から成長路線へと舵を切り替えていく。現在はそれができる不動産マーケット、エクイティマーケットの環境にある。
――足元の収益の状況は。
大久保氏 日本プライムリアルティ投資法人(JPR)のポートフォリオでも、募集賃料を引き上げての成約が出てきた。退室したテナントさんより、新たに入居したテナントさんのほうが賃料が高いケースも散見される。賃料減額がほぼ終息したことに加えて、フリーレントの期間短縮も現実のものになってきた。
実質賃料以外にも収益を底上げする複数の要因が出てきたので、来期以降の収益も徐々に回復していくことを期待している。ほぼ100%稼働を維持できている都市型商業施設の下支えもあり、今期の分配金を5800円から6000円に上方修正した。引き続き6000円台の安定配当を目指していく。
――物件取得が今後の焦点になってきます。
大久保氏 JPRの物件取得は、スポンサーからが6割、マーケットからが4割というのがこれまでの実績だが、やはり増資に絡む物件取得ではスポンサーが頼りになるのではないかと考えている。低下傾向にあるキャップレートは都心Aクラスビルで概ね4%半ばが目線となる。
エクイティマーケットの環境が良好な時は、投資家に対して成長ストーリーを示していく好機であり、我々も良質な大型物件を取得していきたい。増資の際には投資信託、地銀をはじめとする金融機関、海外投資家、個人投資家は皆非常に積極的で、強い関心を示してくれている。
――海外と個人の投資家に強い投資姿勢が見られます。
大久保氏 個人投資家と海外投資家については投資意欲の強さに加えて、これまでと違った動きを感じている。
来年から「貯蓄から投資へ」という国の政策の一環として、個人投資家に向けた日本版ISA、略称「NISA」(ニーサ・少額投資非課税制度)が導入されるが、これは個人投資家のすそ野を拡大する大きなチャンスだ。Jリートは中長期に渡ってミドルリスク・ミドルリターンを得られる投資商品で分配金も株式などに比べて安定性がある。こうしたJリートへ投資する個人投資家に合致する制度として大いに期待したい。
一方の海外は、財政危機を経てしばらく動きのなかった欧州の投資家が動き始めた。アジア勢の投資意欲は相変わらず高く、景気回復に向かう米国も非常に積極的だ。世界を見渡してみて消極的な投資家は不在といったところだ。日本の株式マーケットでは現在、海外資金による売買が半分を占めていると言われており、より大きな資金を取り込むには海外投資家に今以上に目を向ける必要がある。
――JPRは去年の公募増資で、初めてグローバルオファリングを行いました。
大久保氏 それなりのハードルはあったが、結果的に海外投資家の関心が高まり、リレーションを強化できたと実感している。その後、国内外の多くのカンファレンスにも参加して、積極的に海外投資家の開拓に取り組んでいる。
このところの投資口価格の上昇を受けて、最近はファンドマネジャーがダイレクトに時間をかけずに投資判断を下す傾向にあると思う。海外投資家とのリレーションを通じて彼らが期待しているのは、「アクリーティブなPO」つまり「成長性を示せる公募増資が重要」ということを何よりも肌で感じている。これがJリートの成長と活性化にも寄与することは間違いない。
市場の喫緊の課題は、より高い流動性と時価総額の拡大だ。この点は、海外投資家にアプローチするほどに浮き上がってくる課題でもある。1銘柄でコンスタントに1日10億円規模の売買が欲しいことと、約7兆円規模の現在のJリート全体の時価総額も、遠くない将来にその5倍くらいは目指すべきだろう。(続く)
おおくぼ・さとし=77年に東京建物入社。98年に同社RM事業部長、05年に同社取締役関西支店長に就任。10年に同社取締役を退任し、日本プライムリアルティ投資法人の資産運用会社である東京リアルティ・インベストメント・マネジメント代表取締役社長に就任。慶応大学経済学部卒。





















