点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 第57回 シリーズ「Jリート市場」 収益回復へ、仕上げ段階 東京リアルティ・インベストメント・マネジメント代表取締役社長 大久保聡氏に聞く
住宅新報 2013年7月2日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

東京リアルティインベストマネジメント・大久保聡代表取締役社長
点検不動産投資「Jリート市場」シリーズ今号からは、オフィス・商業施設に投資する日本プライムリアルティ投資法人(JPR)の運用会社である東京リアルティ・インベストメント・マネジメントの大久保聡代表取締役社長のインタビュー前半。稼働率が大きく向上したという同氏に市場動向や課題を聞いた。
――現在のマーケット環境をどうとらえていますか。
大久保氏 リーマンショック以降の厳しいオフィスマーケット市況がようやく最悪期を脱しつつある。現在はアベノミクスに背中を押されるように、とりわけ東京のオフィスビル賃貸マーケットが反転に向けて動き出したと実感している。実際に日本プライムリアルティ(JPR)のポートフォリオも3月以降、稼働率の向上が顕著だ。足元では、ほぼ97%まで上昇しており、明らかに潮目は変わった。
――稼働率が大きく上昇した要因は何ですか。
大久保氏 テナントさんが内覧してから申し込みを入れるまでの期間がとても短くなり、非常にスピーディーになったことがあげられる。経営トップのマインドが大きく変わった証拠だ。
リーマンショック後は、唯一増床ニーズが強かった成長産業のITセクターを除いて、コスト削減による縮小移転が目立ったが、現在は拡張移転や館内増床が目立ち、それも多くの産業に広がりが見られる。地域的にも先行して回復基調にあった東京中心部に加えて、東京周辺部においても、コールセンターなどの需要に伴う稼働率の上昇が見られる。結果的に両地域の稼働率が回復したことで、最近では無かったことだが、我々の想定稼働率も半年間で2%も上振れた。
――リート各社の物件取得が目立ちますが、今後の運用戦略をお聞かせください。
大久保氏 想定より稼働率は早く回復し、一部の契約に残るフリーレント期間が徐々に終息してくれば、収益回復は仕上げ段階に入る。来年以降の展望は今以上に明るい。
マーケット環境が厳しかった過去4年間も、JPRは今後最も高い成長が期待できるであろうクオリティの高い東京の賃貸オフィスビルを年間300億~400億円規模のペースでコンスタントに取得してきた。新規物件の取得を通じてポートフォリオの拡大に取り組み、収益性とキャッシュフローを補完してきた。このような内部成長とコンスタントな外部成長がJPRの基本戦略となる。
また現在のエクイティファイナンス環境の良さも、近い将来における大きな成長ドライバーになると考えている。JPRもNAV倍率1倍の水準を、余裕をもって超過している。こういうタイミングでは、増資によって新たに発行する「投資口の増加」を「資金調達額」が上回ることになり、その資金で優良な物件を取得すれば、一口当たりの収益性向上が可能となる。いわゆるプレミアム増資を実施できる好機が現在ということだ。分配金の向上が現実のものとなると、投資口価格の上昇から増資へ、更に増配から投資口価格の上昇へという正のスパイラルが実現できる環境に今あるということだ。
ただ、投資口価格が上昇しインプライドキャップレートが低下したからといって、ポートフォリオの収益性を下げてしまう恐れがある物件の高値掴みは、選択肢ではない。
――投資家の動向に変化は見られますか。
大久保氏 長期金利の動向が不安定なため、Jリートの投資口価格もボラタイルになっているが、内外投資家のJリートに寄せる期待は非常に強いと実感している。その投資家動向を整理すると、イールド重視の投資家層と、NAV重視の投資家層に大きく分けることができる。
前者は、1300ポイント前半のリート指数と、イールドスプレッド3%あたりを目安にして押し目買いを入れていると見られ、Jリートへの投資可能性を模索している状況にある。一方、NAV重視の投資家層は、賃料上昇は来年以降、キャップレートは既に低下していると捉えている。そのうえでスポンサーパイプラインを使える物件取得の蓋然性に着目し、それを実現できるリートかどうかを見極めていると見られる。既に一部の投資家は今のこのタイミングで売却し、利益を確定しているが、そのうえで更に成長力のある銘柄への乗り換えもこのところ目立ち始めている。(続く)
おおくぼ・さとし=1977年に東京建物入社。98年に同社RM事業部長、05年に同社取締役関西支店長に就任。10年に同社取締役を退任し、東京リアルティ・インベストメント・マネジメント代表取締役社長に就任。慶応大学経済学部卒。





















