「既存マンションへの導入はハードルが高い」
MEMSアグリゲータの1つ、長谷工アネシス(東京都港区)スマートマンション事業部の松崎篤常務執行役員はこう話す。
同社は12年4月から長谷工グループが設計・施工する新築や管理する既存マンションに、一括受電設備とスマートメーターの導入を進めている。既存は管理組合に掛け合い、理事会を説得して、総会決議を得たうえで導入する。設備などの初期費用は同社が負担するため、管理組合側の持ち出しはないものの、導入決定に至るまでの合意形成などには、時間と労力が必要だという。
MEMSの導入を考えると、これに組合の持ち出しが必要になる。「管理組合は1戸当たり1万円でも5000円でも、新たな費用を出すということが大きな壁になる」(松崎常務執行役員)ため、ハードルが高いと言わざるを得ないのが現状のようだ。
管理サービスのツール
「確かに既存への導入は難しい面があるだろう。補助対象だが、新築中心に導入が進み、導入による効果が広まったところで、後追い的に普及していけばと考えていた」
MEMS導入の補助を行う経済産業省情報経済課は、こう正直な考えを吐露する。しかし、そのうえで続ける。「新築の戸数は限られている。既存ストックの方が圧倒的に多い。本来的には、そこを変えていかなくてはいけない。その中で、既存に積極的に取り組もうとしているMEMSアグリゲータが出ている。これは嬉しい誤算」(経産省情報経済課)
既存への導入に積極的なアグリゲータの1つにマンション管理会社が挙げられる。伊藤忠アーバンコミュニティ(東京都中央区)と東急コミュニティー(東京都世田谷区)だ〈グループ内に管理会社、長谷工コミュニティをもつという意味では、前出の長谷工アネシスもそれにあたる〉。両社とも自社管理物件を中心に取り組む考えだ。
「管理会社として、組合や居住者の利益に資する取り組みが出来るのではないかと考えた」(伊藤忠アーバンコミュニティの園田陽一執行役員)、「東日本大震災以降、管理組合から電気代削減の要望が多く聞かれる。一番の顧客へのサービスとして、自ら取り組もうというのが趣旨」(東急コミュニティー技術統括事業部エネルギープロジェクトチームの笠井洋介マネージャー)。
〝なぜ、アグリゲータに公募したか〟という問いに返ってくる両社の言葉は、特徴的に思える。それは、自社が元々持つシステムやサービスを提供するという発想ではなく、元々の顧客に対するサービス向上ツールとして自ら取り組むという姿勢だ。そしてそこには、既存への導入を進めるとき、顧客になる管理組合の一番近くにいるという自負もある。
具体的に進めるサービスなどについては、両社とも模索を続けているところだ。伊藤忠アーバンコミュニティは6月1日付で、管理組合にMEMS導入提案などを行う専門組織、スマート化推進室を立ち上げた。「管理組合の横にいる我々としては、MEMSとどういった機器の組み合わせが適切かといったことを含めて、個々の組合にとって最適なものを提案していきたい」(園田執行役員)と話す。
一方、東急コミュニティーは、「MEMSサービスとして、居住者のコミュニティを利用した節電を促す仕掛けを考えている」(笠井マネージャー)。例えば、省エネランキングを50戸単位のグループ戦で行い、上位にはインセンティブを与えるといったイメージだ。「管理会社としては、それが居住者間のコミュニティ形成支援ツールになるという考えもある」(同)という。
効果を発揮するために
「ディベロッパーはお客さんと接点がある。どういったサービスを求めているかまとめられる。お客さんの意向を汲んだうえで、アグリゲータなどと連携しながら新しい価値を提供していかなければいけない」
供給する一定規模のマンションにMEMSサービス、エネコックを導入している野村不動産(東京都新宿区)住宅事業本部の三井宏友商品開発部長は、こう力を込める。
スマートマンションを巡る現状を追ったとき、外的要因と言える課題は少なくない。実際、アグリゲータなどからは、「電力自由化の議論が進んでいる。アグリゲータのサービスがどうなるかは、将来的に電力がどう取引されるか、また、夏や冬の節電要請に応じた場合の節電分が社会の中でどう取引されるのか、国の政策による部分が大きい」や、「蓄電池は防災対策として居住者メリットになるが現状、導入費用が高い」といった声が挙がる。
ただ一方で、新たなサービスの構築など、MEMS導入による効果を高めていくには、それを利用する消費者の声も欠かせない。そしてそれを一番近くで聞くことができるのは、ディベロッパーや管理会社だろう。スマートマンションの効果を最大限発揮させていくカギは、消費者と対面する彼らもまた、握っているように思う。(葭本 隆太)






















