不動産取引現場での意外な誤解 売買編(33) 温泉付きの物件の仲介で気をつける点は? (1)温泉旅館編
住宅新報 2011年9月20日 号 8面
Q この度田舎の知人業者から、「昔からの温泉付き老舗旅館の売り物があるのだが、どうだろうか」という相談がありました。建物は15年前に再築し、かなり立派だということなのですが、温泉付きの物件などは取り扱ったことがありませんので、困っています。基本的なことだけでも教えていただけませんか。
A まず、その温泉が、売主自らが所有しているものなのか、それとも町営・村営あるいは温泉組合などの源泉を利用させてもらっているものなのかを確認することです。そして、売主自らが所有しているという場合、その意味が、源泉地(土地)だけを所有しているのか、温泉を汲み上げる権利も、使用する権利も持っているのかを確認することが重要です。なぜならば、源泉地(土地)を所有していても、その温泉を汲み上げたり、使用する権利までは含まれないことが多いからです。その温泉の権利は、慣習上「物権」として取り扱われ、その登記に代わる台帳が、町村の保健所や温泉組合に備え付けられ、公示されているのです。
Q そうすると、その旅館の所有者(売主)が、源泉地の所有権と、温泉を汲み上げる権利、それにその温泉を利用する権利の3つをすべて持っていれば問題ないということですね。
A その通りです。しかし、すべてではなく、少なくとも温泉を使用する権利を持っていればよいわけです。ただ、その使用する権利を持っているといっても、源泉の所有者あるいは管理者である町村・組合への使用料の支払いや維持費の支払いなどが滞っていないことが重要です。もし滞っていたりした場合には、組合総会などの決議で、使用する権利を剥奪されたり、組合員としての資格停止処分がなされることもあるからです。
Q そのほかにも何か注意する点はありますか。
A 源泉の湧出量です。もし、今回の地震などで湧出量が減少している場合には要注意です。そのような場合には、通常、個々の旅館は地下水や水道水を温泉に混入して使用することになり、温泉の成分そのものに変化を来すことにもなりますので、そのあたりの確認が重要です。これは、単にその旅館だけの問題ではなく、温泉街全体の問題にもなりますので、どの源泉が減少しているのかについて、慎重な調査が必要です。
(渡邊不動産取引実務研究所 代表 渡邊 秀男)
























