展望 20××年のインスペクションⅠ (下) 個々の実務適性とは 技術と「伝える力」
住宅新報 2013年3月26日 号 4面
インスペクション(建物診断・検査)事業者の選択に当たっては、前回テーマにした『企業理念』と共に、やはり個々の実務適性が指標とされてくるのではないだろうか。
国土交通省が先般提示した『既存住宅インスペクション・ガイドライン』の骨子案では、担い手に関する情報として一般開示が望ましいとされる項目がいくつか示された。
個人の場合は、建築士や建築施工管理技士など国家資格の有無と、検査やリフォーム、点検といった実務経験の有無。また、委員から講習制度の創設を求める意見が挙がっており、実現した際はその受講の有無も加わるとみられる。個人インスペクターの雇い主である事業者についても、建築士事務所登録を始めとする許認可の有無、所属する資格者の詳細といった情報の開示を促すことになりそうだ。
依頼の動機は様々
「建築士の有資格者であることを前提として、劣化や修繕に関する知識、経験を考慮する」。さくら事務所(東京都渋谷区)の大西倫加代表取締役社長が、同社のインスペクター採用条件を説明する。ただし採用後の研修では、それら技術的な資質の追求はさることながら、『コミュニケーション能力』の研鑽に力点を置くという。それが現場で必要な要素だと考えているためだ。
同社専属のインスペクターである川野武士・1級建築士は昨年9月に入社。研修を経て、昨年末に〝現場デビュー〟したばかりだ。実務をこなす中で、最近は『引き出す力』と『伝える力』の重要性を実感しているという。
「売買時の参考にする」という大まかな目的は共通でも、そこに至る経緯は人によって違う。例えば「終の住処として物件を購入したい人もいれば、建て替えを視野に入れつつ一時居住する予定の人もいる」(川野氏)。川野氏の場合は診断前に聞き取りを行うが、依頼者によっては建物に対する不安を口に出せなかったり、居住後の暮らしをはっきりイメージできていなかったりするため、うまく汲み取る必要があるという。
そうして把握した個々の事情によって、診断後の報告で「何を優先して伝えるか、どんなアドバイスをすれば良いかは様々」(同)。例えば1つの物件を想定した時、診断結果は同じでも、依頼者ごとに〝最適な報告〟の形があるということだ。
〝かみ砕いて〟説明
不動産コンサルティング事業を展開する住宅相談センター(愛知県名古屋市)の吉田貴彦代表取締役も、『伝え方』を重視するインスペクターの1人である。
8年前の事業開始当初から、設計や現場監理の経験を持つ建築士の仲間との協働体制を敷く。専門機材を用いて床の傾きを調べるといった技術的な部分は、主に建築士が担当。天井裏や床下の状態を確認するほか、診断結果を「噛み砕いて」報告書に記載する作業などを、吉田氏が手掛ける。「(建築の素人である利用者に対して)分かりやすく伝えることが、建築士の場合はかえって難しいこともある」と話す。
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市場がこれから形成されていくだろうことを踏まえると、現状では手探りでインスペクションに取り組んでいる事業者が少なくないとみられる。事業体制の整備に当たり、試行錯誤してきた〝老舗〟に学ぶことは、少なくないのではないか。(鹿島香子)























