点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 第40回 シリーズ「Jリート市場」 高まる分配金の成長期待 三井住友トラスト基礎研究所REIT投資顧問部長 河合延昭氏に聞く 〈前半〉
住宅新報 2013年2月19日 号 3面
連載: 点検 不動産投資

河合延昭部長
点検不動産投資40回目、シリーズ「Jリート市場」の今回は市場創設時からJリートの調査、分析を積み重ねている三井住友トラスト基礎研究所の河合延昭・REIT投資顧問部長に話を聞いた。分配金に対する投資家の評価が「安定性から成長に」変わり始めていると指摘する河合氏のインタビュー前半を掲載する。
――これまでのJリート市場の推移をどう見ていますか。
河合氏 やや急激だったとはいえ、12年以降、Jリートの株価(投資口価格)上昇は、ひとまず投資家から再評価を得たものととらえてよいだろう。その背景には、分配金の低下懸念が後退し安定性への期待が高まってきたことがあげられる。Jリートは11年後半に欧州債務問題など外部環境の影響で大きく売られたため、12年の上昇は、分配金の安定性を再評価した上での割安なバリュエーション水準の訂正によるものといえる。投資対象としての利回り魅力の再評価であり、利回り(イールドスプレッド)の水準が大きく改善してきたことが、今の株価上昇につながっている。
実は、昨年5月以降、上昇基調で推移してきたリート株価は、11月前半などに一時的に調整する局面もあったが、12月の政権交代前後を境に、再び上昇を続け現在に至っている。旺盛な資金流入に後押しされた面もあり、また日銀のJリート買入れなどの下支えもあったが、やはりJリート投資が再び適正に評価されはじめたことが要因とみている。
――都心の賃貸オフィス市況の底打ちも徐々に見えてきました。
河合氏 今年以降の需要がどの程度となるかが重要だが、時期的には、オフィス賃料が底打ちした後、14年以降に反転上昇する見通しがはっきりとしてくれば、リート株価は引き続き堅調に推移していく期待があろう。一方、12年を振り返ると、リート株価は株式との相関が比較的低い水準で動いていたが、ここにきて徐々にその相関は高まる方向にある。最近の上昇はオフィス市況の底打ち反転期待を背景に、これまでの分配金の安定性評価から分配金成長への期待感が出てきたのかもしれない。ただ株式と同じように期待先行の上昇という面もあり注意が必要だろう。
――今年のリート株価の見通しをお願いします。
河合氏 東証リート指数は昨年末時点で1100ポイントを上回る水準にまで上昇し、年間のトータルリターンは40%を超えた。今年は12年の上昇ペースからは鈍化するだろうが、引き続き堅調に推移するとみている。分配金の安定性への期待、見通しにおいて大きなネガティブ要因はなく、利回りなどバリュエーション面からみても魅力的な水準にあると評価している。
ただ、リート株価は今年1月単月だけでも11%アップと急ピッチな上昇を見せた。期待先行で短期的な目線での株価の急ピッチな押し上げが続くようなら、それがまた新たな不安材料になってくる可能性もある。今の堅調な市況が続くためには、分配金を安定的に出せるようになってきたリートの評価が長期的に高まっていくことが求められる。
――リートの保有するオフィスの賃料は、マーケット相場と比べて約10%ほど高い水準にあると言われます。今後、それらの改定も考慮に入れると、リートの収益に貢献してくるのはいつ頃からになるでしょうか。
河合氏 マーケット全体の賃料相場について、今年、反転上昇するという見方があるが、それはAクラス、Sクラスといった一部の競争力の高いオフィスビルでの例で、市場平均としては底打ちあるいは若干の上昇とみている。テナント企業がリーマンショック後に縮小させたオフィス床を再び拡大させ需要が増大すれば、14年以降は力強い上昇も期待できよう。
マーケットの平均相場が底打ちしたとしても、リートの収益改善にそれが波及するまでには時間が必要だ。特にフリーレントを含めた実質ベースの稼働率がどこまで上がってくるかには注目している。入居率と収入ベースの稼働率が近づいていくことが理想のシナリオだが、そのためにはテナントの退去率が大型オフィス系リートで年率4~5%、中規模で10%前後の水準に安定的に落ち着くことがひとつの目安になるとみている。
(つづく)
かわい・のぶあき=1991年大阪市立大学大学院工学研究科(建築学)前期博士課程修了。住信基礎研究所(現三井住友トラスト基礎研究所)に入社後、都市・地域開発、不動産市場、不動産証券化などに関する調査業務に携わる。01年から04年まで国内証券会社にてJ-REITアナリスト。04年12月から住信基礎研究所(現三井住友トラスト基礎研究所)にて機関投資家向けのJ-REIT投資助言業務に従事。





















