相続税にかかる遺言執行者(遺産分割協議書のアドバイザー)の体験談(23) 不動産鑑定士・税理士横須賀博 おわりに 相続事案処理の際、いつも思うこと 義理の親を介護する嫁への配慮を
住宅新報 2012年12月25日 号 5面
連載: 相続・遺言執行者の体験談
義理の親を介護する嫁への配慮を
出生率の減少傾向と長寿命化から、近い将来高齢者の医療介護費用負担が増加することは必至である。加えて、子供が親の老後を世話するという風潮が薄れ、政府や他人に一任という自己中心主義が芽生えつつある。そのために、高齢者の社会保障費は膨張の一途を辿らざるを得ない。そんな中で、政府や他人に頼らずに家族だけの力によって親の介護を懸命に行っている長男や次男の嫁がいる。しかし、これらの健気な嫁に対して税法は何の手当てもしていないことに以前から矛盾を感じている。
特に親の死亡によって相続が発生すると、民法の規定によって法定相続人とそれらへの配分割合が定められている。このため介護をせずに、親不孝の限りを尽くした子供や、嫁に行ったきり親元に寄り付かない子供でも、その法定相続分は平等なのである。 一方、懸命に義理の親の老後を背負って介護にあたった嫁には相続権は与えられていない。そこでこれらの介護に報いるための対策として、生前贈与や遺言の方法が用意されているとは言ったものの、介護をしている親の病気によっては、自分の意思表示ができなくなっており、実行困難な場合も少なくない。
それに、生前贈与は年に110万円を超えると贈与税が課せられるが、その税率は異常に高い。また、たとえ嫁に遺言によって遺贈されたとしても、法定相続人以外の遺贈に対して課せられる税額は、法定相続人の相続財産に課せられる相続税額の20%の上乗せとなっている。そこで、これに対応するために嫁を養子に迎え、法定相続人の一員に加える方法も考えられるが、この方法は相続税を安くするための1つの手法であって国からの恩恵ではない。
また、民法904条の2に寄与分という規定があるが、この規定は「共同相続人中に、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、その者の寄与分を認める」という内容である。この規定から理解されるように、これはあくまでも法定相続人のみに適用される規定なので、嫁への感謝を込めた独立した帰属ではない。
そんな中で、東京高裁第二民事部昭和58年(ラ)第7号平成元年12月18日の判決「相続人の配偶者や母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には、これを相続人の寄与分として考慮することも許される」とした判決は特に光を放つものの、法の力を借りずにこれらの判決同様の結果を得ることは容易ではない。
従って、法定相続人ではない嫁には、せめて税法上何らかの特典を付することが結果として、日本古来の家族を大切にする文化が破壊されずに済むことになる。
人間がこの世から旅立つとき、我が家ではなく、病院等からの一人での旅立ちはいかにも淋しい。それに、今後の高齢化社会に莫大な医療介護費用の負担が確実視されている。それらをいくらかでも軽減できるのであれば、家族の愛も生きるというもの。
今、育児対策あるいは景気対策の一環として、親から子供への贈与に課税上の特例が採用されているが、その一方で自己犠牲の上に、家族の絆を大切にする嫁への対策はテーブルの外にある。それで良いのだろうか。
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これまで私の体験談を述べてきましたが、いかがだったでしょうか。これをもって最終稿とします。この記事は当社のホームページ http://www.yokosuka.jpでも掲載しますので、参考にしていただければ幸いです。
(よこすか・ひろし=横須賀不動産鑑定事務所代表取締役)























