よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第171回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 国土交通省土地・建設産業局不動産業課長 海堀安喜氏
住宅新報 2011年9月20日 号 3面
国際競争力の高い魅力ある市場へ 資金調達に直接金融活用へ
(田辺) 金融危機の際には、収益状況はそれほど悪くないファンドなどでも、デット資金が枯渇したことから経営危機に陥るところがありました。
(海堀前課長) デットはリファイナンス(借入金の借換え)ができないと、デフォルト(債務不履行)に陥ってしまいます。特に金融が逼迫(ひっぱく)してくると、金融機関は自行の貸出金のリファイナンスには応じても、他行や投資法人債(Jリートが発行する債券)のリファイナンス資金までは貸出すことが難しくなる場合があります。
また、国内銀行の不動産関連融資は、残高そのものは90年代後半よりも減少しているのですが、総貸出残高に占める割合はむしろ約12%から約14%へと上昇しています。
これは90年代のバブル崩壊後に、企業が財務体質のスリム化を図るために、不動産を流動化・証券化したことが大きな要因です。すなわち、貸出先が一般企業から不動産業(証券化を含む)に移行したのです。この結果、銀行が貸出金の総量やリスクを減らそうとするとき、貸出金に占めるシェアが高い不動産関連融資は、90年代後半以上に影響を受ける構造になっています。
したがって、不動産投資を行う会社やファンドは、デット資金の長期安定的な調達に努める必要があります。そのためには、エクイティを中長期の投資家から調達するとともに、デットに関しても、借入金の長期化を図るとともに、銀行からの「間接金融」だけでなく、市場から幅広く資金を調達する「直接金融」をもっと活用していくべきでしょう。
今回の金融危機では緊急措置として、官民が一体となって「不動産市場安定化ファンド」を組成し、一部のJリートにデットを供給しました。これは金融逼迫(ひっぱく)時には一定の効果を発揮したと思いますし、官民あるいは不動産や金融という業界の垣根を越えて市場を守ったことにも意味があったと思います。
(田辺) 日本の不動産投資市場は官民の努力でかなり整備されてきましたが、金融危機を経て新たなステージを迎えています。そこでは、これまで以上にグローバルな市場間競争、都市間競争が激しくなることが予想されます。
(海堀前課長) 不動産の有効活用だけを念頭に運用するのであれば、日本は引き続き一定の収益を生み出せる安定的な市場だと思います。しかし、不動産投資市場では、それに金融の要素が加味されます。もちろん、日本の金融もしっかりとしているのですが、中長期的な資金が不足しています。併せて、中長期的観点から不動産に投資する投資家もまだそれほど多くないという面があります。
近年、生保は不動産投資残高を増やしていませんし、年金もまだ本格的な不動産投資には踏み切れていない状況です。地方銀行も一時期はJリートへの投資を増やしたのですが、運用損を出したこともあり、現在では以前ほどの勢いはありません。個人もJリート投信などを通じて徐々に不動産に投資するようになってきてはいるものの、依然として保守的な運用が主流です。
むしろ、短期的なキャピタルゲイン(売買益)狙いでJリートに投資している場合も多いようです。国際競争力という観点からは、中長期的な投資資金を供給する投資家が増えていくような魅力ある市場になっていかなくてはなりません。 (つづく)
※このインタビューは6月末に行われたものです。





















