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プレミアム会員限定点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 第27回 グローバル不動産投資市場 基金の期待高まる私募リート 〈後半〉ラッセル・インベストメント エクゼクディブコンサルタント 中島奈穂氏に聞く

住宅新報 2012年11月6日 号 3面

連載: 点検 不動産投資

マンション・開発・経営

 グローバル不動産投資市場27回目は、「ラッセル・インベストメント」エクゼクディブコンサルタントの中島奈穂氏へのインタビューの後半。年金を取り巻く市場環境や国際比較、更には資産運用における不動産投資の可能性などについて、中島氏に話を聞いた。

 ――年金のコンサル案件ではどのような内容のものが多いですか。

 中島氏 一番多いのは運用機関の選択に関するもので、二番目が年金基金の運営(ガバナンスを含む)、三番目がALM(資産負債総合管理)、基本資産配分についてです。資産クラスの選択についても相談を受けていますが、株式、債券よりもオルタナティブ(代替資産)への投資戦略に関するご相談があります。

 ――資産運用において、不動産投資をどのように位置づけていますか。

 中島氏 一般的にJリートへの投資は、先進国株式とエマージング国(新興国、発展途上国)株式の中間のリスクプレミアム(リスクをとることによる高い利回り、資本市場リスクプレミアム)を期待できるものと位置づけられています。私募ファンドや実物不動産は、Jリートよりもリスクプレミアムが大きく、かつ市場が効率的でない(多数の人が均一の情報を保有していない)ことから得られるα(案件を選択する運用者のスキル)が乗ったリスクプレミアムを期待できる投資対象と考えられています。このような資産特性から、不動産は伝統的資産である株式や債券とは別区分のオルタナティブ(代替資産)と位置づけられています。

 国内の年金基金は、不動産投資にはあまり積極的ではありません。厚生年金基金と確定給付企業年金の合計で見ると、不動産への投資は運用資産全体の0.81%にすぎません。不動産投資をしている個別の年金基金でも、投資比率は1~5%といったところです。かつては10%を超える基金もありましたが、バブル崩壊後は大きく配分比率を減らしています。海外の年金では5~10%程度、不動産に投資しています。

 ですが、年金基金の目標利回りは2.0~3.5%程度であり、株式や債券などの伝統的資産への投資だけでは、この目標達成が難しくなっています。このため、不動産を含むオルタナティブ投資の比率を高める方向にあります。

 ――なぜ年金基金はこれまで不動産投資にあまり積極的ではなかったのでしょうか。

 中島氏 2000年に年金基金に時価会計が導入され、90年代のバブル期に投資した不動産で大きなキャピタルロス(値下がり損)を計上したことが大きな要因になっていると思います。また、かつて「5-3-3-2規制」(安全性の高い資産5割以上、株式3割以下、外貨建て資産3割以下、不動産等2割以下、1997年12月に撤廃)があった頃に、不動産は「リスク性資産」と位置づけられ、長くリターンが低迷した影響も残っているのではないでしょうか。

 一方で、積立水準が2005年、2006年ごろの1~1.1倍から現在の0.6~0.9倍にまで低下している積立不足の基金が多くなり、ここ数年は特にリスクを避ける風潮が強く、株式との相関がある不動産へシフトできなかったのも事実です。

 ――年金のJリート投資が進まない背景には、リスク資産と見なされてきたことに加え、流動性の低さも課題として指摘されています。

 中島氏 規模別でいうと、伝統的資産といわれる投資市場の規模は100兆円以上が一つの目安です。最低でも2ケタ(10兆円)を超える規模がないと一つの資産クラスとしては認めてもらいにくい。

 グローバルな資産ごとの投資ユニバース(上場物)を見ると、株式市場の時価総額が約35兆ドル、債券市場が45兆ドルなのに対して、ヘッジファンドは約2兆ドル、不動産は0.9兆ドル(私募不動産は米国のみカウント)にすぎません。

 ただ流動性がやや不十分な面がありますが、上場リートもインカム(分配金)狙いの小口投資という点で魅力がありますし、株式市場の時価変動の影響を上場物よりは受けにくい私募リートも年金基金からの期待も高まるのではないでしょうか。

 コンサルタントの立場として現在、年金基金に強く推奨できる資産クラスが見つけにくい状態ですので、市況好転の期待や安定したインカムリターンが見込めるということにまだ気付いていない投資家に認識してもらうことは必要だと考えます。 (つづく)

なかじま・なほ=日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)などを経て、00年よりゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント運用投資戦略室長として年金基金、機関投資家への運用投資アドバイス業務等を統括。その後、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)営業統括本部クライアント・アドバイザリー・ソリューションズ部長を経て、11年10月より現職。中央大大学院国際会計研究科オプション理論非常勤講師歴有。東京女子大卒。

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