点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 第20回 グローバル不動産投資市場 5年ぶり取引減少に歯止め ジョーンズラングラサール社長 河西利信氏に聞く
住宅新報 2012年9月18日 号 3面
連載: 点検 不動産投資

河西社長
グローバル不動産投資市場を点検する連載4回目は、世界70カ国、1000都市に広がるネットワークを通じて、不動産総合サービスを提供するジョーンズ ラング ラサールの河西利信社長に話を聞いた。前半は「日本企業のグローバル展開に商機がある」という同氏に、同社のビジネスの視点で日本の不動産投資市場を語ってもらった。
――はじめに事業内容を教えてください。
河西社長 日本におけるジョーンズ ラング ラサール(JLL)グループの事業は、前身のイギリス系ジョーンズラングウートンが1985年に日本に最初のオフィスを開設したのが始まりだ。1999年にラサールパートナーズと合併したのを機に、日本法人も現社名のJLLとなった。合併時の日本のスタッフは8人ほどで主にオフィスリーシングを手掛けていたが、それ以降、業容拡大を続け、現在はグローバルに不動産に係るフルラインのサービスを提供できるまでに成長してきた。東京・大阪・福岡に拠点があり、9事業部体制で従業員は700人を数える。
経済が成熟期に入り、高い成長は見込めない日本の不動産市場だが、半面、マーケット規模は大きく、この先も安定的に推移していくとみている。当グループはビジネスの成長性という点で、非常に有望な市場だと日本を位置付けている。
――日本の不動産市場のどこを有望と見ていますか。
河西社長 我々が日本の成長分野として期待しているのは、不動産に係るアウトソーシング需要だ。現在、厳しい収益環境に置かれている多くの日本企業が、不動産に係る業務の多くを内製化しているが、これらが今後、専門的知識を持った外部機関によるサービスに置き換わる方向になるのは必至で、当社にとってフォローの環境だ。日本における人的拡大、M&Aによる外部成長の両面で積極的に取り組んでいるところだ。
当社が強みを発揮できるのは、不動産のインバウンド投資と、日本企業のファシリティマネジメント(FM)だ。
海外投資家に日本の不動産を紹介するキャピタルマーケット事業は現在、ピーク時には及ばないものの08年のリーマンショックによる落ち込みから脱し、この先は回復基調に向かうことが挙げられる。
FMのアウトソーシングも、サービスを買うことが日本企業の間で既にトレンドになりつつある。企業のコスト管理に役立つFMは、特に大きな成長が見込める分野だ。
更に付け加えると、当社はグローバルにサービスを提供できる点で、多国籍企業のクライアントに強みがある。そのため、今年度は新たにグローバルに事業展開する日本企業の専門部署を立ち上げた。例えば電気や自動車などの大手輸出企業になると、生産拠点、物流拠点、営業所をはじめとするオフィスなど世界中に500、600拠点もある企業も多い。こうした企業の間で、グローバルな観点での拠点の再構築というニーズが急速に高まっている。専門部署は世界中の拠点のコストやリースを分析して戦略的な拠点の統廃合についてアドバイスをしていく。
――日本市場は、投資できる(購入できる)収益物件が少ないと言われます。
河西社長 不動産の流通量が少ないのは、日本の不動産の9割以上を一般事業法人が所有しているためだ。主にファンドやリートが所有するような証券化された不動産はひとケタに過ぎない。典型的な逆のケースがオーストラリアだ。コーポレートの持つ不動産の多くが証券化されており、海外からの投資資金がそうした不動産を買いに集まっている。
今後、日本市場でも投資対象となる物件が多く流通するようになるには、一般事業法人がこれまでバランスシートに抱えてきた力の象徴だった不動産を手放すかが大きな鍵だ。また、そうした不動産を担保物件として銀行が実質所有している影響も大きい。当然、政策的な理由や銀行自身のマインド、あるいは手放すタイミングといった諸事情もある。このため10年、11年には投資マネーが潤沢であっても実際の売買にはつながらないといった事態を招いた。
だが、その傾向もここにきて変わり始めている。一般事業法人が不動産を手放し始めたのに加え、レンダーも新しい不動産に対するファイナンスに前向きになってきた。エクイティの資金も依然潤沢で、今年上半期の不動産の取引量は早くも去年1年間の7割水準に達した。今年は5年ぶりに減少に歯止めがかかって上向くだろう。 (つづく)
河西 利信氏(かさい・としのぶ)の略歴=85年に大和証券入社。97年からロンドンで自己投資業務に携わる。99年からゴールドマンサックス証券会社に11年在籍。その間、日本における不良資産、不動産への投資運用に従事。04年のパートナー昇格後はリアルエステート・プリンシパル・インベストメント・エリアの日本責任者として様々な不動産関連投資を経験。12年4月にジョーンズ ラング ラサールの日本法人社長に就任。85年一橋大学商学部卒、90年米国ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院修士課程卒。





















