大震災を乗り越えよう 「3.11後の選択」 再起・復興を期して<70> ポスト原発と雇用問題 立地自治体は自立できるのか
住宅新報 2012年9月11日 号 10面
会津若松の仮設住宅に住む木幡仁さんは、昨年11月に行われた大熊町町長選に立候補し、現職の渡辺利綱町長に敗れた。掲げた基本政策は、脱原発と町の移転だ。
「年間1ミリシーベルト以下でなければ、子供を安心して育てることはできない。その安全が担保されないのに戻れというのは、町を預かる長たる者はできないはず」
実は木幡さんの父親も脱原発を掲げての町長選に挑んでいる。当選確実だと思われた前日、一部の人たちが寝返り、100数十票差で敗れた。「いったん推進が決まってしまえば、後は雪崩を打ったように、みな東京電力に取り込まれていった。資本の力は絶大だと思った」
雇用の場は大熊町内に
福島県の原発立地自治体で今のところ汚染物質の中間貯蔵施設を受け入れようとしているのは、大熊町だけだ。
木幡さんは大熊町内に雇用の場を求めるが、生活の場は大熊町以外でと考えている。
「中間貯蔵施設ができれば、その周辺施設もできる予定で、そこに仕事は発生する。ただ基本は太陽光や風力などの自然エネルギーで雇用を生み出す。町の人は線量の低い安全な地域から通うことになる」
もちろん実現には様々なハードルが待ち構えている。線量がどこまで下がるのか、自然エネルギーへのシフトがどこまで可能なのか。
どの立地自治体をも悩ませるのは、ポスト原発の雇用だ。木幡さんは原発を廃止した後、失業者が出ることはある程度覚悟するべきだという。
「それは歴史を紐解けば、歴然と分かる。エネルギーシフトが起こる時は、必ず失業者が出る。かつて石炭から石油にシフトした時にも、大量の失業者が出た。労働争議も各地で起こったが、国民の側から『炭鉱を守れ』という声は出てこなかったでしょ。石油の方が便利だったから」
木幡さんは、「原発は過渡期のエネルギー源、その役割が終わった」と考えている。
「職場がなくなるのは当然。エネルギーシフトをハードにやるかソフトにやるかはあるが、少なくとも職場を返せというのはおかしい。私が疑問に思うのは原発のエキスパートは電力開発のエキスパートでもあるのだから、その人たちがなぜ自然エネルギーやシェールガスなどの新しいエネルギー開発に入っていかないのかということ」
そもそも原発の雇用は、時代に合った健全なものとは思えない。
下請け構造の意味
原発サイトで実際に働く労働者は、東京電力の5次請け6次請けという深い下請け構造になっている。場合によっては7次8次請けもある。元請けから出される3万円ほどの支払いは中抜きを繰り返して6000円ほどになる。
世の中の多くの経営者が数円、数銭単位での中間コストの低減に汗を流している時代に、なぜこれほどの中抜き構造がまかり通っているのか。
木幡さんは断じる。
「決して雇用問題などではない。これは利権構造の問題なんです。中間搾取の構造だ。それをずっと当たり前だと思ってきた。その構造に依存する人ばかりになった。私が一番願うのは、町の人たちが、自立していくことです。環境が変わってもどこでも自立して生きていける精神と知識・技能を持っている人をつくっていく。特に若い世代はそうならないといけない」
3.11後問われ続けているのは、日本人の自立である。
(フリーライター・佐藤聡)





















