相続税にかかる遺言執行者(遺産分割協議書のアドバイザー)の体験談 (8) 嫡出子も非嫡出子も同じ人間 予期せぬ相続人の出現
住宅新報 2012年9月11日 号 5面
連載: 相続・遺言執行者の体験談
相続は人の死によって開始されるが、それには遺産の確認はもとより、まずは、故人の戸籍謄本と除籍謄本によって相続人を確定しなければならない。一般の家庭では通常、特殊な事がない限り戸籍謄本を目にする機会はない。そんなことから、戸籍謄本を入手して初めて、予期せぬ相続人の出現にビックリという事例を時折経験する。
ある相続事案について被相続人の除籍謄本を取り寄せてみると、「昭和○○年△月×日○区○丁目甲野乙子 同籍花子を認知する」という内容が目にとまった。まさに非嫡出子の認知のある案件である。この事実を依頼人に話すと「うちの人に限って…間違いではないですか」と信じられない様子。
しかし、認知手続きは、認知届に認知する人の戸籍謄本を添付しなければならないし、他人が出来るものではないこと。それにその手続きには妻の同意を必要としないことなどを説明した。その話を聞いた依頼人はどっと泣き崩れ、しばし時の経過を待つほかなかった。
ただ、引き受けた私としては、なんとか円満に相続事案をまとめなければならないので、依頼人からの要請を受けて、認知された花子さんの自宅を訪ね、母親である甲野乙子さんに対し、花子さんのお父さんが急死したこと、その原因やその後の経過を報告した上で、認知された花子さんにも相続権があることを告げ、相続に関する考え方を尋ねた。
その回答は次のようなものであった。
「今まで尽くしてくれたご恩から、花子の相続権は放棄します」と鮮やかなもので、その上で、「残された奥様にはお詫びをしてください。そしてそれは、花子の考え方でもある」と、そんな回答に思わず胸が締め付けられた。その経過を依頼人に報告した上で、たとえ「相続権を放棄する」と言われても、その回答に甘んじることなく、何らかの形のある気持ちを差し上げることが人の道、故人も喜ぶことではないかとアドバイスし、その大役も私が担わせていただき、この相続の事案は終結した。
このほか、同じ認知の例がある。認知した母親は既にこの世を去っていた。認知された非嫡出子は、故人への情は見当たらず、実に合理主義者であった。そのため代理人の弁護士との話し合いになったが、比較的にこれもスムーズにまとまった。
これらから思うに、嫡出子であろうと、非嫡出子であろうと、同じ人間。少し法的な枠組みをはみ出しただけで悲しみや差別を招くこともあるが、そんな悲しみに終止符が打たれるのも相続。そして、相続人に対し、故人が解決できなかった負の遺産を遺族が解決するのもまた相続である。
その解決こそ「故人が生存中には成しえなかった最後の親孝行なんだよ」と励ますのも、また相続の相談を受けた私の役目だと認識している。
ただ、可能であるならば、そのつけは生前に自分の力で解決しておくべきものと思ってはいるが…。死は突然にやってくるのだから。
(よこすか・ひろし=横須賀不動産鑑定事務所代表取締役)























