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プレミアム会員限定点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 第19回 グローバル不動産投資市場 岐路に立つ市場、リートの原点に ドイツ証券不動産投資銀行部ディレクターRREEF日本・韓国リサーチヘッド小夫孝一郎氏②

住宅新報 2012年9月11日 号 3面

連載: 点検 不動産投資

マンション・開発・経営

 グローバル不動産投資市場を点検するシリーズ3回目は、前回に続いて実務者インタビューを通じて日本の不動産投資市場を探ります。「日本の不動産投資市場は判断の分かれ目にある」と指摘する、ドイツ証券の小夫孝一郎氏のインタビュー後半です。

 ――どのようなビジネスチャンスがあると思いますか。

 小夫氏 過去12年間の世界各国・各都市の住宅価格の推移を表した住宅価格指数によると、香港、シンガポールに比べて日本の不動産が安いことが分かる。例えば、大都市の一等地にある広さ100m2、3LDKのマンション価格は、香港やシンガポールが2億円以上なのに対して、東京都心部は1億円強とソウルや台北などとほぼ同水準だ。割安感に加えて、所有権が取得できる点も日本の不動産の魅力。アジア富裕層などの投資需要は拡大余地がある。

 もう1つは民間資金を活用したインフラ整備だ。当社もオーストラリアのメルボルン空港を10数年間所有しており、収益を倍増させた実績がある。日本では今、地方空港を民営化する案などが出されているが、外交問題はあるにしても成田や羽田のような本丸を対象にした大がかりな民間資金活用にドラスティックに取り組むべきだろう。

 一方、日本から海外に向けたアウトバウンド投資については、現在検討が進んでいるリートの海外不動産取得の制度変更が大きな転換点になる。投資家もレンダーも、ヨーロッパでの不動産のエクスポージャーを大幅に減らしている。ユーロ安もあり、日本の銀行や投資家には大きなビジネスチャンスだ。

 ――日本の改善点は。

 小夫氏 改善すべき点としては、証券化不動産の割合が少ない、投資家が買える物件が少ない、不動産投資市場の透明性の向上が指摘されている。このため機関投資家などに不動産が投資アセットクラスとして認識されていないのが現状だ。

 これらの問題を改善していくひとつの手法が不動産指標の整備だ。例えば毎年発表される地価公示は広く世間に報道されるが、不動産投資指標(例えば投資リターンのインデックス)に関する報道は極めて少ない。このことは不動産投資市場の成熟度が低いことの表れだ。

 現在、協会団体もデフォルトになるべき不動産投資指標の整備に力を入れているところだが、指標の運用という意味ではこれからに期待するしかない。メディアにもそうした点を意識してもらうことも重要だ。

 ――透明性の問題は改善してきたという声を聞きます。

 小夫氏 2000物件に上るJリートの保有物件に限れば、透明性が増して問題点はほぼクリアになった。しかし、Jリートを除く不動産売買取引の情報開示は、デベロッパーや私募ファンドなどには依然不透明感がある。自己保有する不動産の収益を開示したくない、賃借人の支払い賃料が開示されるのを嫌う、賃料値引き交渉の材料になるなどの理由があるからだが、必要なのはビル全体の収益力であり、改善の余地があるのではないだろうか。

 ――最後に日本市場の展望をお聞かせください。

 小夫氏 収益不動産の売買に占める各投資家別の構成比に日本の特徴がよく表れている。日本市場は、ディベロッパーとJリートを含むパブリック部門(日本の上場企業に相当)の取引割合が世界各国の中でも圧倒的に高い。日本ではディベロッパーが不動産を買うのは当たり前に思われているが、海外では買っている主体は年金基金であり保険会社などが中心だ。ディベロッパーのシェアが高い市場であるということは、買いたい投資家に物件が回らないという側面もある。

 そうした中でもJリートの売買取引が全体の3割から4割を占めるまでに増えてきたことはいい兆しだ。リート市場が徐々に拡大していけば、大手ディベロッパーをはじめとするスポンサー依存からの独立性が高まり、意思決定力も高まっていくからだ。

 いずれにしても、海外投資家を更に呼び込んでグローバル化と共に市場拡大を目指すのか、それよりも市場の安定を優先するのか、日本の不動産投資市場はちょうどその判断の分かれ目に差し掛かっている。その方向性を探るためにも、不動産投資市場の象徴である日本のリートが誰のためにつくられたのかという原点に今一度立ち返ってみることも必要ではないだろうか。 (つづく)

 

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