鑑定士協レター 開業後の九州新幹線 インフラ構築、地価上昇要因に
住宅新報 2012年5月8日 号 8面
九州新幹線全線開業
1972年に福岡から鹿児島までの九州縦貫ルートとして計画された九州新幹線は、11年3月12日に全線開業した。博多|熊本間が最短で33分、博多|鹿児島間が最短で1時間17分と各都市が身近になった。
全線開業から1年を迎え累計利用者は、在来線特急時の前年同期に比べて、熊本|鹿児島間では目標(40%増)を上回る65%増だが、博多|熊本間では37%増に留まり、博多の近場駅はやや伸び悩んでいる。
危機をチャンスに
地元シンクタンクが九州新幹線開業前に行ったアンケート調査では、九州新幹線への期待度は鹿児島と熊本では温度差があったようだ。
鹿児島では「時間短縮効果」による期待感が高いが、熊本では「素通り」や「ストロー効果」などの危機感が大きかった。加えて、「全線開通後訪れたい九州の県」として大阪府などで行った調査では、鹿児島は1位であるが熊本は7県中5位だった。
このような危機感の中、熊本では県知事が熊本出身タレントのスザンヌと一緒にPRのため吉本新喜劇に出演するなど、開業前から積極的に広報活動を行っていた。
東日本大震災後の観光の西日本シフトも追い風になったのか、熊本では懸念されたストロー効果をよそに、関西圏や中国地方からの観光客が増加している。
熊本城は歴史文化体験施設や飲食店舗などを備えた「城彩苑」を昨年3月にオープンし、新幹線効果と相俟って入園者が10%も増加したという。
熊本の民間シンクタンクは、九州新幹線全線開業1年で熊本への経済効果は195億円(日帰り客分の効果は除く)と試算しており、予想以上の効果が出ているとのことである。
また、熊本県のゆるキャラとして人気の「くまモン」は、当初は新幹線開業までのキャンペーンキャラクターであったが、人気の高まりから継続が決まり、昨年の関連商品の売り上げは25億円に達したという。
地価にも好影響
九州新幹線全線開業は、地価にも影響を与えているようだ。12年の地価公示をみると、九州各県の地価は下落基調にあるものの、九州新幹線沿線の主要駅周辺では上昇地点が見られた。
福岡ではJR博多駅周辺の4地点(最高上昇率プラス5.9%)が、全国の商業地上昇率上位10地点内に入った。
JR博多駅の新ビル「JR博多シティ」は開業半年で3000万人を突破し、予想を超える商業施設となった。
熊本では唯一の上昇地点がJR熊本駅周辺(プラス2.3%)であった。
JR熊本駅は、博多駅や鹿児島中央駅のような集客力の高い駅ビルはないが、駅東側では市街地再開発事業によって地上35階建ての超高層タワーマンションや情報交流施設等を併用する複合施設が建設され、駅西側では土地区画整理事業が進んでいる。
JR熊本駅の整備は11年の「九州新幹線開業」と18年の「在来線駅舎(安藤忠雄氏の設計)などの完成」の二段階で行われる。
鹿児島ではJR鹿児島中央駅の周辺で上昇地点が1地点(プラス1.5%)見られた。
駅ビル「アミュプラザ鹿児島」は新幹線効果で来客数が増加し、東側駅前には地上14階の「鹿児島中央ターミナルビル」が今年4月に完成、5月中旬にはホテルや飲食店がオープンする。
九州新幹線沿線の主要駅周辺では、新幹線効果による集客力の増大やインフラ整備等が地価上昇の要因になっている。
今後の期待
新しく誕生した九州新幹線は、九州圏のみならず九州圏外との地域を結ぶ大きな役割を果たしている。九州には、うまい食べ物、温泉など、観光資源が豊かである。
今後は、九州新幹線沿線以外の各県にも新幹線効果が波及していくことが期待される。
12年の地価公示では、東日本大震災被災地や九州新幹線主要駅周辺の公示価格は、取引や課税等にあたって重要な指標となっている。改めて鑑定評価活動の社会的公共的意義の重さを感じる。
(公益社団法人熊本県不動産鑑定士協会、戸取憲正)





















