大震災を乗り越えよう 「3.11後の選択」 再起・復興を期して <47> なぜ放射能が危険なのか 影響力が大きいのはα線
住宅新報 2012年3月27日 号 11面

発災から1年後の福島県浪江町。内陸の津島地区は車の中でγ線が毎時9マイクロシーベルト以上あった
リスクは確率的
この期に及んで、こんなことを問うのも恥ずかしい気がするが、この問いこそが、放射能をめぐって社会のあらゆる関係をぎくしゃくさせている。
むろん「気にしない」という人は少なくない。個人的には年間20ミリシーベルトでも、100ミリシーベルトでも構わない。あるいは500ミリシーベルトでも。健康に影響が出ないなら||。
問題は影響に個人差があることだ。被ばくによる健康障害のリスクについては、高線量になればなるほど、障害が起きやすくなるとされる。
よく被ばくリスクを確率的と表現するが、確率的ということは、ある値で影響の出る人と、出ない人がいることだ。一般にこれが細胞分裂の激しい子供や若い世代には出やすく、高齢になればほとんど影響が出ないとされる。それでも体調や他の既往症の関係で同じ年代でも差が出る可能性はある。
つまり「自分は大丈夫」でも、「他の人は大丈夫ではない」こともありうるのだ。さらにその発現が5年後なのか10年後なのか時間も読めない。また確率的に影響が出るのも年100ミリシーベルトまでで、それ以下については「影響が報告されていない」とされる。もちろんこれに対する反論も多い。低線量被ばくの長期データが少なく、影響が否定されているわけではない。
放射性物質はなぜ危険かと言えば、放射性物質が原子から電子を放出して、細胞を構成する分子を切断する場合があるからだ。放射性物質から出る放射線は主にα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線や医療現場で知られるX線などがある。このうち影響を与えるのがα線とβ線だ。γ線とX線は物質の透過力が最も高く分厚い鉛でないと遮断できない。α線とβ線は透過力は弱く、β線は薄いアルミニウム、α線は紙1枚で遮断できるとされる。したがって外部被ばくで脅威となるのはγ線を出す放射性物質だ。一方β線、α線は透過力が弱い半面、物質に対して強い影響を与える。
琉球大学名誉教授で内部被ばくに詳しい矢ケ崎克馬氏によれば、「β線の場合、線が影響を与える範囲が1センチ程度と短いが、体の中に入ってしまうと、一本の線で1万から2万個の分子を傷つける可能性がある」という。これが今回の事故で原子炉などから塵となって分散し、体内に入ってしまうと、たとえそれが1000分の1ミリ程度の微細なものであっても、兆単位の原子を持っているため、その原子が持つ電子に応じ被ばくが繰り返されることになるという。
もちろん、人間の細胞には修復機能があり、切れた分子をつなぎ直すことはよく知られている。しかし一度に大量の切断がなされるとエラーが起こる可能性が高くなる。そのエラーが細胞の突然変異を起こし、がんなどの健康障害に変わっていく。
同じ場所で細胞を攻撃
内部被ばくが問題となるのは、こうした放射線を出す放射性物質が体の一定の場所にとどまり、同じ場所の細胞を攻撃し続けるからと言われる。放射線のうち最も影響力が大きいのがα線で、影響範囲は100分の4センチほどしかないが、β線の20倍から4.5倍の影響を与えるとされる。放射性物質のなかでプルトニウム239が恐れられるのは、α線を出す上、半減期が2万4000年と長いためだ。
より問題なのはこのβ線、α線測定がいまだ十分できていないことだ。
(フリーライター・佐藤聡)





















