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スタンダード会員限定実務家・識者座談会 不動産投資家市場は今(2) 『タイミング』の分散投資が効果的

住宅新報 2012年3月13日 号 3面

マンション・開発・経営

流動性向上 時価総額の増加が不可欠

 『不動産投資市場の今』を語る、実務家・有識者5人による座談会2回目は、不動産投資市場を代表するJリートに話題が集まった。創設10年間で検証された、グローバル化やボラティリティ(価格の変動性)、リスク分散といった課題や矛盾点、更には可能性などについて、多角的な視点と広い視野で活発な意見が交わされた。

 田邉氏 10年間の実績を積み重ね、Jリート市場の課題、強化すべき事項も明らかになってきた。

 前原氏 その1つはスポンサーとJリートとの利益相反問題だ。かつて、Jリートがいろいろなスポンサー、不動産会社の一種のトラッキングストック(社内の特定事業部門や子会社の業績に連動させて利益配当を行う種類株)みたいな扱われ方をしているとの批判があった。結果的には、上場不動産会社とJリートの共生、共存が続いている。

 Jリートの運用面における裁量の余地のなさも課題ではないか。今のJリートのP―NAV(Price―Net Asset Value。Jリートの株価に対する1株当たり純資産《時価ベース》の比率。1以上であれば資産価値以上に高く評価されていることを示す)が低い要因には、運用面のダイナミズムが小さいということもあるように感じる。少し極端であるが、今のような時期にこそ、不良債権処理絡みや若干瑕疵(かし)のある物件に投資し、取得後に瑕疵を治癒(ワークアウト)するような、ハイリターン狙いの投資をすることがあってもよいのではないか。

 坂口氏 もうひとつは、Jリート市場への長期運用資金導入の問題だ。リートはオファリング(新規上場、増資)する時に、長く持ってくれる投資家を希望するが、投資家の立場から見ると、時価総額で最低1000億円はないと最低限の流動性(売却の容易性)を確保できない。一方で、そういうリートを長期の投資家に持ってもらうと、売買しないのでますます流動性がなくなるという矛盾が続いている。発行体側の努力も問われると思う。

 河合氏 資産運用会社の投資スタンスにも疑問を感じる場合がある。昨年は震災や欧州問題の影響を受けながらもJリートの増資は継続した。ただ株価が低くエクイティ調達環境が悪いにもかかわらず物件取得のタイミングを優先させ増資を実行するケースも見られた。これに対して投資家からは「こんな低いPBR(Jリートの株価に対する1株当たり純資産―簿価ベース―の比率)で資金調達してまで、何故、今物件を買う必要があるのか」(株価が低く評価されているときに、その株価で資金を調達するのは希薄化の程度も大きくリートにとって不利なため)と厳しい意見も聞かれた。「希薄化させているけれども分配金は維持している」という戦略だけでは短視眼的との批判を免れない。新しい議論ではないが、NAV(1株当たり純資産、時価ベース)を維持向上させるという観点も必要で、資金調達コストを意識した不動産投資スタンスが求められると思う。

 小川氏 リートが創設された当初は、株式や債券との相関が弱い、ミドルリスクミドルリターンという特性が期待されていたが、現状では株価との連動性が強く、当初の期待に応える投資商品とはなっていない。しかしキャッシュフローとNAVの安定性は実証されたので、これが非上場型のオープンエンドファンド(私募リート)を組成するアイデアにつながった。私募リートでは基準価額が不動産の時価(鑑定評価額)を基準に算定されるので、リートが抱えている課題に対するひとつの回答となっている。ただし、流動性についてはリートに遠く及ばず、この点が私募リート固有の課題になると認識している。

 田邉氏 先行きグローバル化がますます進んで、人材や組織も今後の重要な課題だ。

 坂口氏 昨秋から潮目が変わって、海外投資家も日本への投資に関心を持ってきているのだが、国内のプレーヤーでそれを引っ張ってきて、その後もコミュニケーションを続けられる人材が限られている。仮にそうした人材がいても、社内やスポンサーとの関係をマネージできるかという組織としての問題もある。

 前原氏 世界2位という規模の日本の不動産投資マーケットで、全世界における日本のインバウンド投資(海外から日本への投資)の順位が低いと聞いたことがある。アウトバウンド投資(日本から海外への投資)はもっと少ない。やはり、人材や組織の問題も大きいように思う。

 坂口氏 今は少し変わったが、昨夏まではアメリカのリートの約10%は、日本人(個人)が投信を通じて持っていた。その意味では、個人のお金は不動産投資にも向かっている。ただ、個人の国内不動産やJリートへの投資は必ずしも増えていない。それが年金になると、更に不動産投資には慎重だ。ただ、不動産はリスクが高いという年金でさえ09年、10年あたりは割とリスクを取るようになってきているのも事実だ。

 河合氏 これから不動産投資を検討しようという年金に対しては、他資産との相関とかボラティリティ(価格の変動性)といった投資商品特性の説明が不可欠だが、Jリートのボラティリティの高さが投資対象とできない理由とされることが多い。だがボラティリティの高さは、上場リートである以上は避けられない面もある。結局は投資のタイミングが重要ということではないか。

 坂口氏 ご指摘の通り、リート市場は、安定収益を狙う長期投資を正当化できるマーケットというよりも、タイミングが重要になっているという指摘がある。

 河合氏 海外のリートも含めて上場商品でグローバルに分散するのか、あるいはリートのセクターで分散するのかといった視点以上に、実は、時間、投資タイミングの分散が一番いいということではないだろうか。

 (つづく)

※参加者

日本不動産研究所 証券化事業室長 小川兵衛氏

住信基礎研究所REIT投資顧問部長 河合延昭氏

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 投資銀行本部マネージングディレクター 坂口英治氏

東急不動産キャピタル・マネジメント代表取締役社長 前原仁司氏

モデレーター

宮城大学事業構想学部教授 田邉信之氏

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