大震災を乗り越えよう 「3.11後の選択」 再起・復興を期して<37> 全漁連会長発言のインパクト
住宅新報 2012年1月3日 号 12面
「原発には一切協力しない」
東電への怒り
全国漁業協同組合連合会(全漁連)の服部郁弘会長は、12月6日、東京電力の勝俣恒久会長に対して抗議を行った。福島第一原発の敷地内にたまった放射能汚染水を、地元の漁業関係者に断りなく放出したからだ。放出した汚染水は浄化され低濃度となっているとされるが、漁業関係者の怒りは収まらない。
今回の放出に限らず福島第一原発の施設からは、発災以降、幾度なく汚染水の放出や漏えいが繰り返されてきた。こうしたニュースが報道される度に福島沿岸はもとより茨城沿岸や三陸沿岸の水産物までが売れなくなっていった。
服部会長は、「日本の漁業を崩壊に導く、暴挙だ」と批判し、こう言い放った。
「我々は原発にある程度協力してきたが、それは放射能を出さないという約束があったから。今後は原発には一切協力をしない。新規増設は認めないし、今あるものをすべて即時停止してもらいたい」
この発言のインパクトは今後の原発行政を左右するほど大きい。なぜなら全国の原発がすべて止まる可能性が出てきたからだ。
稼働阻止を表明
日本の原発はすべて沿岸部にある。日本の海岸線には、漁業権が設定されており、各地域の漁業関係者の協力がないと立地稼働はできない。服部会長が述べるように、漁業関係者はこれまで国や電力会社が進める原発事業に理解を示し、協力してきた。
むろん原発立地稼働による漁業権侵害に対しての補償はあった。金銭的補償のほか、魚の種苗研究センターなど施設や研究プログラムなどを用意する場合もあった。発災以降は、漁に出ることができない漁業関係者の給料補償も行われてきた。
服部会長はそれら一切を捨て、原発稼働を阻止することを表明したのだ。海洋産業に詳しい東京海洋大学の濱田武士准教授によれば、「今回の発言は、補償をいくら厚くしてもらっても、再稼働に一切協力しないという宣言とみていい」という。
「実は4月の段階で、もしかしたら全漁連が原発止めるのではないかという話は出ていた。ただ全漁連はあくまで各漁業協同組合の意向を受けて動く上部組織。最終的に地元の漁協の判断だが、今回は福島、茨城の意向を反映している」とみる。
ただうがった見方をすると、反対のポーズをとることで補償額を釣り上げることもできるのではないか。
「どうしてもそういう見方をされる。断れば嫌がられ、受け入れれば金を釣り上げたと言われる。揚げ句に意見が分かれ、地域が分断される。そういう場をいくつも見てきた。だからこそ、この発言は重い」(濱田准教授)
発言をめぐって今後東電や国から揺さぶりをかけられるのは必至だろう。発言撤回もありうるのか。
「それはないでしょう。少なくとも全漁連に天下りはありませんから」(濱田准教授)
服部会長は再稼働させないことを、電力業界全体に訴えるとしている。歴史の扉をこじ開けることはできるか――。
(フリーライター・佐藤聡)





















