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プレミアム会員限定大震災を乗り越えよう 「3.11後の選択」 再起・復興を期して<32> 前のめり解除の仕打ち

住宅新報 2011年11月22日 号 11面

連載: 大震災を乗り越えよう 「3.11後の選択」

マンション・開発・経営

事業主への補償が「おかしい」

東電が提示した算出法

「おかしい。どうしてこうなるのか」

 南相馬市内の商工会議所に勤める友人は、電話の向こうで何度も「おかしい」を繰り返した。原発事故の発災から8カ月が経ち、ようやく事業主への補償交渉が大詰めを迎えつつある。友人はその交渉窓口の一員として東京電力とやり取りしていた。

 東電側が提示した補償対象は(1)避難指示等により支障が生じた事業にかかる逸失利益、(2)避難等対象区域内にあった商品を含む事業に関わる財物にかかる検査費用、(3)上記検査費用以外の追加的費用で、(3)の事例としては商品や営業資産の廃棄費用、事業所の移転費用、営業資産の移動・保管費用、再開のために生じた機械等設備の復旧費用などが挙がっていた。

 一見すると納得のいくような補償対象に見える。だが友人は、肝心の「逸失利益」の算出法がおかしいという。

 提示された逸失利益の計算式では(「事故がなければ得られたであろう収益」から「実際に得られた収益」を引いた額)マイナス(「事故がなければ負担したであろう費用」から「実際に負担した費用」を引いた額)が補償対象となる。だがこの考えを当てはめると、「頑張っている企業ほど泣きをみる」ことになるというのだ。

「従業員の雇用を守るため率先して地元に戻り、何とか事業を再開し、取引先が離れていくなか懸命に利益を出そうと努力してきた企業がある。しかしこの算式では赤字分だけが補填されるため、利益が出るその分が差し引かれ、補償額が減ることになる。つまり頑張って赤字額を圧縮するより、事業を再開せず、無為に過ごした方が、補償額が大きくなる」のだ。

 友人は続ける。「もっとおかしいのは、避難指定となった『直接被害区域』の事業者より、避難指定を外れた『間接被害区域』の事業者の方が補償額が大きくなること」

 避難指定を外れた区域の事業者は、発災後もそのまま操業継続できたので、逸失利益は少なくなる。よって補償額も少ない。だが東電が提示した計算書に則れば、操業停止を余儀なくされた直接被害区域の事業者より補償額が高くなるケースがいくつも出てきたのだ。

「税理士が計算した例では直接被害で250万円ほどだった補償額が、間接被害で計算し直すと400万円超に跳ね上がった」例もある。

 だが結局その跳ね上がった間接被害額も幻と消えた。

低く見積もられる不安

 というのも、補償額を低く見積もられると不安を抱いた自主避難や操業停止に追い込まれた間接被害区域の事業者が、南相馬市全体の直接被害指定を求め、これが認められたからだ。

「だが問題はこれから」と友人。避難区域が解除されれば、補償は打ち切られる。有力企業が移転し、人が転出して商圏が縮小するなか、補償や支援を頼らずにどう事業を立て直せというのだろう。

 南相馬市では市長が人口流出と商工業の衰退を懸念し、早くから避難指定解除を求めてきた。だが、結果、それは自らの首を絞めることとなった。東電の老獪な策に翻弄されて――。

 (フリーライター・佐藤聡)

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