紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第117回 坂口有吉
住宅新報 2011年9月13日 号 5面
離婚後もお互いを思いやる元夫婦 地震怖がる性格を気遣う
当社で何度か部屋を借りていただいている年配の夫婦がいる。とても仲が良さそうに見えたのだが、ご主人が定年を迎えるくらいの年齢になって離婚することになり、私に「別々の部屋を紹介してほしい」と依頼があった。ご主人には家賃4万3000円の1DKを紹介し、奥さんは他の業者さんで部屋が決まった。ご主人はふだんからマメな人で、アパート周りの草取りや枝落としなど進んでしてくれて、私が礼を言っても「いいんだよ、どうせヒマしてるんだから」と笑っている。
熟年離婚
お互いに1人暮らしを始めてしばらく経った3月の終わり頃、ご主人から私の携帯に電話が入った。いつになく暗い調子で「前の女房の連絡先を知ってたら教えてくれないかなあ。前の携帯番号は今は違うみたいなんだよ…」と言う。強がってても熟年離婚。イザとなったら女より男のほうが未練がましいもの。元々は相性が良かったハズだから「よりを戻したい」と望んでいるのかな、と思っていた。
私も以前の携帯番号しか分からないし、仮に知っていたとしても本人の了解なく教えるワケにもいかない。奥さんとは街で週に1回くらいは顔を合わせるので、「じゃ、会ったら電話するように伝えますね」とは言ったものの、そういう時に限ってなかなか顔を合わせない。ようやく4月末になって会うことを得たので伝えると、奥さんの口から意外な真相が飛び出した。
実家が宮城
「あの人は私が地震を物凄く怖がることを知っているから、こないだの大地震の後ずっと心配してくれてるんだと思う。それと、うちの実家が宮城でしかも被害が大きかった場所なんで、きっと私の家族のことも心配してくれているんじゃないかなあ…」とのこと。後で電話すると約束して別れていて、再び街で会った時に聞いてみると、奥さんが話していたとおりで、実に感激した。
私は、元妻やその家族がどうなっても心配などしない。子供たちに対しても「私を苦しめていた人間が死んでも『惜しい人を亡くしました』などと言えるワケがない」と言っている。とてもじゃないが、その元夫婦のように離婚後も互いを思いやる器量などはない。
(坂口有吉不動産・社長)























