「令和時代の賃貸ビジネス」 ~コンサルタント沖野元の視点~ 第100回 賃貸経営における「割れ窓理論」
住宅新報 2026年5月19日 号 12面

先日、築古アパートのオーナーから「どうも属性の良くない入居者が入って困る」という相談を受けた。
自主管理ならよくあることであるが、管理委託をしているという。ちなみになぜ自主管理では属性の良くない入居者が入りがちかと言うと、多くの場合は複数の客付け業者に客付けを依頼しており、基本的にすべての業者が客付けのみになるため(管理をしていないため)客を付ければお金になるという状態ができてしまうことにある。
そして、それは複数の業者との「早い者勝ち」勝負になっているため、言い方は悪いが「誰でもいいから早く案内して決めればいい」ということになりがちである。これが管理をしていると問題のある入居者を入れるとクレーム対応等で自分たちの首を絞めることにもなるため、入居者選びは慎重になる。
自主管理なら管理は自分たちではない(オーナーである)ため、ある意味無責任に客だけ付ければ後の責任はオーナーだから誰でもいいという心理になる。もちろんこれが全てではなく、良い入居者が付くケースも多々ある。ただ、筆者は現役の不動産業者としてこうした事例を多数見ているため管理委託推進派である。
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では管理委託で属性の良くない入居者が付くというのはどういうことか。ひとつはオーナーと管理会社の担当者とのコミュニケーション不足であり、これについては長くなるので今回の稿では割愛したい。物件に焦点を当てて考えてみる。世の中に築古アパートは多くある。ただその「状態」はさまざまである。状態というのはざっくりと築古でも清潔感のあるものと古さにかまけて汚れや乱れが目立つものとに分けられる。
「割れ窓理論」というのをご存知だろうか。
「建物の窓が割れているのを放置すると、他の窓も壊されてやがてすべての窓が壊される」という環境犯罪学における理論で、この理論をもとにした実験は多数ある。中でも1990年代にニューヨーク市のジュリアーニ市長が実施した政策はこの理論を応用したものとして有名である。当時犯罪が多発していたニューヨーク市で落書きや違法駐車などの軽微な犯罪を徹底的に取り締まったところ、5年間で殺人や強盗などの重大な犯罪がいずれも50%以上減少した。街の汚れや乱れを排除することで人の心理に「秩序」が芽生える。これによって事故やトラブル、モラル低下を防げるということである。
この割れ窓理論は賃貸経営にも応用可能である。それが先のオーナーからの相談である「属性の良くない入居者の入居をどのように防ぐか」という点につながる。
具体的な賃貸経営における割れ窓理論の応用については次回お伝えしたい。
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【プロフィール】
おきの・げん 日大大学院修了。不動産コンサルタント兼不動産系研究者。不動産実務検定講師。リーシングジャパン代表取締役。執筆・講演多数。






















