紙上ブログ 不動産屋の独り言 844 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 入居者から頂いた弟さんの形見 使っていた人の思い受け取る
住宅新報 2026年3月24日 号 6面

入居者の高齢女性から電話があった。「先日、弟が亡くなって形見分けをしたんだけど、私は腕時計をもらったの。こんな大きな時計なんてはめられないし、誰か喜んで使ってくれる人がいれば差し上げたい。社長、いらないかな」とのこと。現物を見ていないから何とも言えない。第一、自分で使わなくても、傍に置いて弟さんを偲ぶほうがいいのでは、と思い辞退したが、「困ったわ。とにかく見てくれないかな。社長は腕時計をしないんだっけ?」と聞く。昨今はスマホで正確な時刻が分かるが、私は腕時計を常にはめている。全部で6本持っていて、TPOに合わせて使い分けている。男が身に着ける最高のアクセサリーは腕時計、と思っているほどだ。
見やすい鉄道時計
本音では、ロレックスとか骨董品の手巻き時計ならうれしいな、と思っていたが、見せてもらうとクオーツで、大きくて真っ白な文字盤でアラビア数字で時刻表示がされている以外、メーカー名も型番も書かれていない。あとは時針、分針、秒針があるのみ。一目見て鉄道時計、つまり「正確な運行を求められる鉄道員が着ける時計」と分かった。とにかく時刻を見やすくするため、あくまでシンプルに作られた時計だ。それで「ああ、これは鉄道時計ですね」と言ったら、「え、どうして分かるの?。そうなの、弟は定年までJRに勤めていたのよ」と言う。そして、「そういうことを知っている人に使ってもらえたら弟も喜ぶわ」とも。それでありがたく頂くことにした。






















