紙上ブログ 不動産屋の独り言 814 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 家主から値下げの恩義 感謝どころか仇で返すのか
住宅新報 2025年8月19日 号 6面

多摩郊外に管理する大きな貸家。当初の家賃は30万円。事情があって、今は20万円に下げているが、先月更新契約の期限を迎えた。家主からは「いっぺんに値上げしたのでは入居者も大変でしょうから、更新のたびに2度に分けて4万円ずつ値上げしてほしい。最終的に28万円なら相場からしても高くはないでしょう」とのこと。20万円に下げたのは借主の事情に配慮したため。というのも、借主は50歳手前の女性で、夫を若くして病気で亡くした。家主が厚意で家賃を4カ月免除して、更に「今までは共稼ぎで払っていたけど、これからは一人で払わなければならないから大変でしょう」と一気に値下げしたのだ。その状態が10年も続いている。
生活も回復して
その借主がやっている通販での物販の仕事も軌道に乗り、息子も働き始めたことで、「そろそろ元の家賃に近づけてもいいのでは」と家主が考えるのも当然だろう。こういう場合、借主のほうから「ご配慮頂き、家賃を下げて頂いていますが、ようやく生活も落ち着いてきたので、元の家賃に戻して頂いても大丈夫です。本当に助かりました」とは絶対に言ってこないもの。「このまま借りていられたらありがたい。寝た子を起こすようなマネはしないようにしよう」と、本音が透けて見える。前回の更新契約時も、家賃の話には触れないように気をつけているのが分かった。その気持ちも理解できるが、家賃の値下げだけでなく4カ月も支払いを免除してもらった。10年分を合計すれば、総額1300万円も得をしている。






















