紙上ブログ 不動産屋の独り言 795 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 ある入居者への恩 退去後も義理を返していく
住宅新報 2025年3月25日 号 6面

昔、当社の管理物件に入居していた大手家電メーカーA社に勤める家族。数年後の退去時にトラブルが起きた。原因は家主C氏が偏屈で、「壁紙も畳もクリーニング代も、全部入居者に請求して払ってもらってくれ」と言う。私は「そんなことはできませんよ。きれいに使ってもらっています。敷金から引くとしてもクリーニング代だけです」と何度も話したが聞き入れない。そんなこと、入居者には言えない。ところが、困っている私の様子を察したのか、入居者も「何かありましたら遠慮なく仰ってください」と言う。仕方なく事情を話すと、「会社から引っ越し手当が30万円出ますから、それを振り込みます」と言って、家主に振り込んでくれた。おかげで家主の要求した額には足りて事なきを得たが、そのこともあって、私はそのアパートの管理を降りることにした。
理不尽な家主
C氏の被害はそれ以外にもある。別の客が、契約時にアパート敷地内の駐車場に空きがなく、「空いたら優先的に貸してほしい」との条件で借りた。そして、別の入居者の退去で駐車場が空いたのに「俺はあんな奴に貸さない」と約束を反故にし、管理会社として大変な思いをさせられたのだ。どういうつもりか、貸室賃貸業を何と心得ているのか、全く理解に苦しむ家主だった。にもかかわらず、私が管理辞退を告げた時には「長く付き合っていてそんな別れ方しかできないのか」と叱られた。だが、それはこっちのセリフだ。






















