不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 770 リフォーム代を渋る家主 10年入居に応え、快く出してほしい
住宅新報 2024年9月24日 号 6面

当社の管理物件で、10年ほど入居した入居者が退去することになった。1DKで家賃は5.3万円。中央線の駅から徒歩9分で日当たりも良い2階の角部屋だ。引っ越しの立会いに行くと、壁紙は相応に汚れていて、トイレの壁紙も下のほうはカビが生えている。台所の床はフローリングではなく塩ビシート。建物は築30年で、長らく使っているので15年は経っていて、ところどころ穴が開いている。他にも、トイレが少し水漏れしていたり、木部の塗装がはがれていたりで、全面的にリフォームする必要がある。
他業者に頼めず
当社はこれまで25年付き合っていたリフォーム業者と決別したため、新しくお願いするリフォーム業者と一緒に室内をチェックした。見積もりを出してもらうと税込みで約30万円という。それを電話で80代半ばの家主に説明すると、「そんなに掛かるんですね。もっと安くあげる方法はないですか。人に貸すものだからそんなにいいモノを使わなくてもいいと思うの」と言う。「30万円のうちのクリーニング代は入居者に負担してもらいますので家主さんの実質的な負担は27万円ほどですよ。壁紙も床も襖も減価償却しているので費用は家主さん負担になります。入居者に請求することはできないですよ」と伝えたが納得しない。家主は耳が遠いので、電話では大声で話すことになる。そうなると威圧的な印象を受けるだろうし、別に高級な素材を使う訳でもないから、値引き交渉ではなく「もっと安くしろ」と言われても困る。50万円、100万円もする工事ならともかく、30万円の工事で、新しいリフォーム業者には言いたくない。かと言って、別の業者にも頼めない状況だ。
家主の意向に悩む
その家主、亡くなったご主人は公立小学校の校長をしていたし、他にも貸家を持っている。更に、長男夫婦と同居していて、お金に困っている訳ではないと思う。将来の不安はあるものだろうが、10年間もあれば途中で一度くらい入居者が入れ替わっていたとしても不思議はないし、それだと2回のリフォームでもっと負担しなければならなかったと思う。家主の意向をくみ取らなければこちらの信用問題になって管理を切られるかも知れない。さて、どうしたものか。 (坂口有吉不動産・社長)






















