紙上ブログ 不動産屋の独り言 763 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 若い入居者から退去時のお礼 義理堅さに感謝の思い募る
住宅新報 2024年7月30日 号 6面

この仕事をして36年、こんなに義理堅い入居者も珍しかった。しかも相手は人生経験を積んだ高齢者ではなく青年だ。「6月末に退去します」と連絡があったその青年Yさんから、「これからあいさつに伺いたいのですが、お店にいますか」と電話があった。店の固定電話は全て私のスマホに転送になるため、私が電話に出たからといって店にいるとは限らない。「ごめん、外出中で、あと30分くらいで戻ります。でも、あいさつなんて必要ありませんよ。準備で何かと忙しいでしょう」と言ったが、「お戻りになった頃に伺います」と続ける。私が店に戻るとすぐやって来て、手には大きな有名菓子店の袋を持っている。
異動で退去に
「長い間お世話になりました。これは私の気持ちですが、坂口さんと大家さんに」と言って差し出す。「これと言って何かお世話をしたことはありません。気にしてもらうことはなかったのに申し訳ありません。Yさんはいつも家賃を月末までに振り込んでくれたし、とてもありがたい入居者さんでした」と言うと喜んでくれたが、それは本当の話。毎月家賃が遅れる入居者が何人もいるため、私は給料を持ち帰れない月が多く、Yさんみたいな入居者ばかりなら助かるのだ。退去されるのはつらいし寂しい。Yさんはメガネの専門店に勤めていて、近々都内の支店に異動になるらしい。私も半世紀ほど前にはメガネの専門店に勤めていたので話が合うのもうれしかった。






















