紙上ブログ 不動産屋の独り言 573 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 客付会社からの要求に苦慮 家主の立場にも配慮を
住宅新報 2020年10月13日 号 6面
多摩郊外で、当社が「礼金0、敷金0」の条件で入居者募集している物件がある。古いアパートだし、このご時勢で礼金0は当たり前としても、私は「敷金1は預かったほうがいい」と反対した。だが、家主が「出るときのクリーニング代も私が出すからいいでしょう」と言うので、いわゆるゼロゼロで募集することに。
家賃も安く設定しているが、何人も案内していてもなかなか決まらない。それでも家主は「急がなくていいわよ。別に決まらなくても生活に困っているわけでもないし、坂口さんを責めたりしないから」と言う。その家主とは以前、一緒にヨーロッパを旅行したこともあって気心が知れている間柄である。
礼金分の上乗せを
しばらくして、その物件を何度か案内してくれている業者から問い合わせが入った。「この物件、礼金0で出ていますけど、礼金を1にしたらその分いただけませんかね」と聞く。ゼロゼロ物件なのだから、他社から申し込みが入った場合、仲介料はすべて客付業者に行って、当社は家主から広告料という名目で1カ月分をいただくことになる。
ということは、普通に決まっても、家主は賃料の1カ月分がマイナスになっているということ。もし礼金を1にしたなら、客付業者だけが2カ月分を手にすることになる。
礼金を1にできるのなら、「礼金1で申し込みをもらいますから、それを管理会社さんに払ってもらえば家主さんの負担も楽になりますね」と言ってほしかった。
家主にも温度差
過去には「礼金を2つのせて、その分をくれないか」と聞いてきた業者もあった。「相手は法人だから礼金を2カ月のっけても払ってくれるから」ということで、一応家主に聞いたら「私は家賃が入れば文句はない。後のことはあずかり知らない話」という冷たい返事だった。
たまたまほかの家主宅を訪問していたときの出来事で、はたで聞いていた家主が「ひどい話よね。もしうちの物件でそんな風に言われて、相手の業者が3カ月分を手にすることになったなら、私は坂口さんに3カ月分払ってあげるわよ」と言ってくれた。だが、もちろん辞退した。自分のことばかり考えずに、どうして相手の身になって考えることができないものか悲しく思う。 (坂口有吉不動産・社長)






















