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スタンダード会員限定不動産市場異聞 大東建託賃貸未来研究所 麗澤大学客員准教授 宗健 第4回旧耐震物件を放置してよいのか

住宅新報 2019年10月29日 号 7面

連載: 不動産市場異聞

管理(賃貸・分譲)
不動産市場異聞 大東建託賃貸未来研究所 麗澤大学客員准教授 宗健 第4回旧耐震物件を放置してよいのか

 住宅ストック総数約6000万戸のうち1000万戸以上は耐震性が不足する旧耐震物件と推定されている。その多くは持ち家の戸建て住宅だが、賃貸住宅約1850万戸のうち200万戸以上は旧耐震物件と推定されている。

 近年の賃貸住宅着工数は40万戸前後で推移している。ストック総数約1850万戸に対する比率はわずか2%程度であり、全ての物件が建て替わるには50年近く(これをサイクル年数という)掛かる。93年のサイクル年数約32年(賃貸住宅ストック約1400万戸に対して約44万戸の着工があり比率は3.1%)に比べると長期化しており、更新が進まないために老朽化のスピードは上がっている。

デメリットとリスク

 旧耐震物件は、断熱性に乏しいためエネルギー効率が悪く、CO2排出量も多い。また、バリアフリー対応もなされておらず高齢者には住みづらく、遮音性も悪いため、総じて住みここちは良いとは言えない。更に、耐震性が不足している建物は大きな地震の際の倒壊リスクが高く、居住者の人命に大きく関わるリスクを内包している。

 こうした問題は、賃貸住宅だけではなく、持ち家にも共通しているが、賃貸住宅のほうがより問題は大きい。賃貸住宅は事業として営まれているため、居住者の安全に対して一定の責任を貸し主が負うべきであり、利潤はそのための投資にも充当されるべきであるからである。

賃貸規制と高度利用促進

 旧耐震物件の建て替えが進まない理由には、建築基準法上の既存不適格に該当する場合があることや、所有者自身も高齢化しているため、建て替えのための新たな投資を避けたいという意向があることなどが考えられる。

 しかし、81年の建築基準法改正からすでに40年近くが経過しており、ほとんどの場合、当初のローンの返済や償却がほぼ終わっている状況であることを考えれば、旧耐震物件の建て替え・再開発を阻害する経済的要因はかなり縮小しているはずである。そしてかなり多くの旧耐震賃貸物件が建て替えられている状況を考慮すれば、そろそろ旧耐震賃貸物件に対する規制を考える時期に来ているのではないだろうか。

 具体的には、全国一斉の規制は大きな混乱を招く可能性が高いため、東京23区の都心部から順次、未対策な旧耐震物件の賃貸を禁止していく、ということが考えられる。同時に再開発を更に促すような政策も求められるだろう。そして、都心部の旧耐震賃貸物件の更新促進は、都市部の土地の高度利用促進にも繋がる。土地は私有されていても、あるべき姿に活用することは所有者の義務でもある。

 また、都心部に限らず、老朽化した旧耐震賃貸物件を建て替えていくことは、住宅の品質の平均値を向上させ、住んでいる人々の居住満足度・幸福度を向上させていく効果が見込める。状況によっては建て替えではなく、滅失を選択するケースもあるだろう。

 なにより、直下型地震が想定されている首都圏中心部の旧耐震賃貸物件の建て替えを強く促すことは、地震によって失われる人命を減らす。経済を活性化させ、限られた土地の高度利用を促進するという社会的意義がある。

 なお、賃貸共同住宅の老朽化の実態などについては、筆者も執筆に参加した「都市の老い(勁草書房)」も参照されたい。

 そうたけし‥87年九州工業大学卒後リクルート入社。リクルートフォレントインシュア代表取締役社長、リクルート住まい研究所長を経て現職。博士(社会工学)筑波大学。

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