住まいの〝利用価値〟 長寿化踏まえた新発想 ◇下 定期借地権という選択 資産よりも思い出や教育に投資
住宅新報 2018年10月16日 号 1面

敷地中央には居住者共用の庭(「パークナードテラス桜区大久保」)
60歳以上の高齢期でも新たな住まいの購入や建設ニーズが強いことは、住宅金融支援機構の商品「リ・バース60」(リバースモーゲージ型住宅ローン)の利用実績で明らかになった(10月2日号(上)参照)。
土地は残さない
同商品は毎月の返済は利息のみで、元金は死亡後に対象物件を売却して一括返済するもの。つまり、土地・住宅を子供に残すことを前提にしていない。資産としてよりも、自分が生きている間、快適に暮らすという利用価値を大切にする生き方だ。ということであれば、高齢期の住宅取得では定期借地権付き住宅も十分視野に入るのではないか。ただ、50年以上が条件となる一般定期借地権契約は長寿化時代といえども高齢者にとっては長過ぎるきらいがある。
そこで検討されるべきは、30年経過後に建物を地主が買い取ることで借地契約を終わらせる仕組みの「建物譲渡特約付き借地権」だ。事例は多くないが、今後は高齢者向けの住宅供給手段として改めて検討する価値があるのではないか。定期借地権推進協議会運営委員長の大木祐悟氏は個人的見解としながらも「一般定期借地権を設定した上で、30年経過後に建物を譲渡する特約を設定する方式が、使い勝手がいい」と述べている。
一方、若年層にとっても定借住宅は今後注目される可能性がある。土地を所有しないという選択肢は、その分の資金を他の用途に振り向けることが可能だ。例えば、家族旅行や子供の教育費などに充てることができる。子供に土地や家を残すよりも、思い出や貴重な体験を残してあげたいという想いだ。
変わる価値観
パナソニックホームズは今夏、埼玉県さいたま市で、定期借地権付き分譲住宅「パークナードテラス桜区大久保」(全6戸)の販売を始めた。同社にとって久しぶりの定借プロジェクトだ。
997m2の街区中央には居住者の共用庭を設け、ゆとりあるランドプランとした。借地期間は72年までの55年間。これまでに30代~40代の一次取得者を中心に数十件の問い合わせが入っている。街区全体の雰囲気やデザイン、間取りなどに対する評価も高い。
同社担当者はこう語る。「現時点では、顧客の定期借地権に対する認知度は高いとはいえないが一定のニーズはあると考える。将来的に地価が更に下がることになれば、土地を資産として所有することへの価値観が変わることも十分予想される。今回のプロジェクトを通じて、そうしたニーズをくみ取り、今後の提案につなげていきたい」。
定借制度が誕生したのはバブル景気の余韻が残る92年。今では事業用を中心に広く活用されているが、住宅分野では、ひと頃の勢いがない。その理由は、地価が右肩上がりの時代とは異なり、ユーザーに価格的なメリットが打ち出しにくいためと言われている。
前出の大木氏は、「人口減少や空き家・空き地の増加といった課題が山積する今の時代だからこそ、改めて定借制度を見直す意義がある」と話す。






















