第三者管理者方式の矛盾と可能性(下) 管理体制を立て直す 『自立』助ける発想へ
住宅新報 2011年10月4日 号 4面
業者が第三者管理者業務を受託する際のルール整備に向けた検討が、国土交通省で始まる。何が論点になるか、管理組合が第三者管理者方式(以下第三者方式)の導入を検討する場面を想定して考えたい。
まず、委託費をどう確保するか。事例が少ないため相場が定まっていないのが現状だが、いずれにしても管理会社との管理業務委託契約の内容を見直したうえで捻出するケースが多いだろう。しかし特に高経年マンションでは、管理費の滞納や修繕積立金の拠出にさえも支障を来している場合が少なくない。となると、どれほどの管理組合に選択の余地があるのかは未知数だ。また、管理者の業務が適切になされているかチェックする体制を講じる段階でも、同じ壁にぶつかる可能性がある。
利益相反、財産の毀損 不安材料への対応は
次に委託先について。選定に当たっては、「専門性」と「財産保全能力」が主な基準になると見られる。どちらも満たすのは管理会社だ。ただし、管理業務の受注者が発注者を兼ねることになるため、「利益相反に当たる」との声が根強くある。組合が承認する以上違法性はないものの、立場が変わることはない。この点について高層住宅管理業協会(東京都港区)では、「管理者業務とフロント業務を請け負う部署を分け、会計を別にするのも一案」と示す。
同協会は信託を活用した管理者方式を研究するなど、数年前から協議を重ねてきた。今春には第三者方式に起因するトラブルの仲裁機関を置く必要性について、国交省へ提出した要望書で触れている。「住民主体の管理が基本だが、(第三者方式を)提案できる素地は整えていく」方針だ。
一方、「管理のプロ」としての適性を備えるのはマンション管理士も同じ。しかしこちらは、財産保全能力の観点で少なからず懸念がある。多くが個人事業主のため、横領その他で万が一組合財産が毀損された場合、補償する手立てを持っていないからだ。出納業務を含む基幹事務は従来通り管理会社に委託するとしても、組合運営に携わるうえで管理費や修繕積立金の取り扱いは避けて通れない。委託する側からすれば、一定の財産的基礎や何らかの保全措置を求めたいところだろう。
これに関連して一般社団法人日本マンション管理士会連合会(東京都千代田区)では、今年1月に運用を開始した管理士専用の賠償保険制度について、第三者管理者業務にも適用範囲を広げる方向で調整中だという。
理事会『廃止』より『休眠』 後の復活目指す
以上を検討する過程のどこかで、管理組合はある決断を下さなければならない。理事会を廃止しその役割を丸ごと管理者へ移譲する方式と、理事会は存続させたまま管理者を役員などに据える方式のどちらにするか、という選択だ。
費用の多寡はさておき、『役員のなり手が不在』という課題のみの解決を図るなら、理事会を廃止する方が有効と言える。運営に伴う煩わしさもない。ただ、管理者1人に権利が集中する分、組合側のリスクが高まることは必至だ。また、いったん廃止してしまうと再び理事会主導へ戻す方針に転換した際の移行手続きが、容易ではないだろう。
こうしたデメリットを踏まえ、(財)まちみらい千代田の堀切俊秀氏は「せめて『休眠状態』にした方がいい」と提案する。更に「管理者には理事会運営と併せて、管理体制の立て直しを図ってもらうのはどうか」と踏み込む。理事会の将来的な『復活』を前提とした考えだ。
「マンション管理の適正化に関する指針」にある「管理主体は管理組合である」という文言が、形骸化しつつある現状。だからと言ってその基本を捨て去り外部の力に頼ろうとするのは、中長期的な影響も踏まえた得策なのか疑問が残る。ただ、マンションの『自立』を助ける発想に立つなら、第三者方式の可能性は予想を超えて広がるのかもしれない。 (鹿島 香子)






















